日本全国の原生植生において、潜葉虫の採集を行ない、(1)潜葉虫の羽化までの飼育、(2)潜孔葉のさく葉標本の作成、(3)潜孔様式の解析を行なった。得られた標本が多すぎて、(3)は十分完了していない。調査地は、北海道(斜里海岸、標津半島、夕張山系、大雪山系、様似地方、定山渓涌払原野)、北陸(若狭地方、新潟の池沼群)、中部(八ケ岳山ろく、佐久地方、白馬山系、南アルプス)、近畿(芦生、大峯山系、南紀)、中国(帝〓峡)、九州(対島)、小笠原諸島などである これまで530属1600種近い維管束植物から潜孔葉が採集された。新たに潜葉虫が採集された植物の属は、シダ植物ではスギナ、ヒトツバ、ノキシノブ、コタニワタリ、裸子植物ではイチイ、カラマツ、トガサワラ、種子植物双子葉類ではヤチヤナギ、ミチヤナギ、フタバアオイ、ウマノスズクサ、フツキソウ、アワブキ、イヌエンジュ、ジャケツイバラ、センダイハギ、ミズタマソウ、キリンソウ、ヒトツバハギ、ヒメシャラ、イヌナズナ、マツグミ オオバヤドリギ、ハマベンケイ、ムラサキ、サワルリソウ、ヤチツツジ、オウギカズラ、メハジキ、キクグラクサ、ツルアリドウシ、スイラン、ミコシギク、カセンソウ、単子葉類ではギョウジャニンニク、タケシマラン、シュロソウ、アオイカズラ、シバナ、コウホネ、カヤツリグサ、ハマニンニク、オカメザサ、エビネ、トンボソウ、クマガイソウなどである。これらの多くは原生植生のよく残った場所に限って発見された。資料が集まるにつれ、同じ植物種を、潜孔場所(葉肉・表皮・葉脈)や潜孔時期、潜孔する葉の齢(若葉、成葉、落葉)の異なる複数の潜葉虫がしばしば利用していることが明らかになってきた。現在、これらの資料を整理し、潜葉虫の寄主利用様式の多様性という視点から分析を継続している。
|