研究分担者 |
斉藤 泰弘 京都大学, 文学部, 助教授 (70115848)
片山 英男 東京大学, 文学部, 助教授 (70114436)
伊藤 博明 埼玉大学, 教養部, 助教授 (70184679)
西本 晃二 東京大学, 文学部, 教授 (00012352)
岩倉 具忠 京都大学, 文学部, 教授 (50093191)
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研究概要 |
本年度は研究報告を中心とした2回の全体会議がもたれた。第一回は平成4年7月20日に開催された。先ず加藤盛通が「レオナルド・ブルーニとキケロ」を報告。ジェロルド・E・シーゲルなどがブルーニを修辞学者Rhetorと見ていることを批判し,ブルーニはキケロの模範に従って,事象の真理をふさわしい言葉で述べようとする弁論家Oratorたらんとしたのであって,言葉の美しさだけを重んじる修辞学者たらんとしたのではない,と主張した。次いで根占献一が「ルチェッライの園」という題で,16世紀初頭のフィレンツェの政治的状況と人文主義者たちの動きについて報告。さらに北田葉子が「ガリレオとメディチ家」と題して,ガリレオとイエズス会との対立を,両者のパトロネジの対立という観点から見直す報告をした。第二回全体集会は,平成4年12月5日に開催された。先ず伊藤和行が「ルネサンスにおける太陽崇拝思想と太陽中心説」という題で,ルネサンスにおいて太陽を宇宙の価値的中心と考えることが,必ずしも物理的な配置においても宇宙の中心であることを意味しなかったことを,フィチーノ,テレジオ,ブルーノ,カンパネッラなどを通して明らかにしようと試みた。次いで本田誠二が「セルバンテスーーその牧歌小説における愛の哲学」という表題で,スペインの反動宗教改革期におけるセルバンテスの恋愛観が,イタリア・ルネサンスにおける恋愛観よりも保守的であったことを比較文学的に論じた。今年度の研究報告を通じて,ルネサンスにおける人文主義と自然観との関係は非常に奥が深く,政治的社会的背景をも考慮されるべきことが改めて明らかにされた。またスコラの自然哲学(例えばポンポナッツィからガッサンディに至る)も人文主義の影響で変質してきたことが,討論において指摘された。ルネサンスの自然観が従来の定説とかなり異なった視角から再検討されるようになったことは,本研究の大きな成果と考えられる。
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