研究課題/領域番号 |
03301008
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩城 見一 京都大学, 文学部, 助教授 (40025086)
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研究分担者 |
金田 千秋 筑波大学, 芸術学系, 助教授
魚住 洋一 京都市立芸術大学, 美術学部, 助教授 (10168669)
村田 純一 東京大学, 教養学部, 助教授 (40134407)
米澤 有恒 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (70093341)
太田 喬夫 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (30098230)
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キーワード | 形象 / 情報 / 気分 / 仮象 / 完全性 / 実証的形而上学 / ゲシュタルト / 感性的認識 |
研究概要 |
本研究は分担者全員が順次研究成果の中間発表を口頭で行い、それを巡って議論を積み重ねることで各自の知見を広めつつ課題の共通性を確認してゆくという方法がとられた。各分担者の発表は以下の通りである。(1)形象認識の固有性(岩城)(2)美と完全性(米沢)、(3)G・ベーム芸術経験(太田)、(4)形象と直観(井面)、(5)N・オレームの美学(ゲスト発表者中村)、(6)鏡の物質性(吉岡)、(7)美的なものの時間性ーガダマーと芸術の読解の問題(加藤)、(8)情報史観(室井)、(9)大学院博士課程学生二名によりW・ベンヤミンのアウラ論、およびベルクソンの美学の映画論への適用、(10)気分についてー感性論としての美学への寄与(小林)、(11)コリングウッドにおける感性的認識としての美学(北村)、(12)現実と仮象ーサルトルトレインを手がかりとしてー(魚住)、(13)感性的認謝と実証的形而上学(上村)、(14)形の知覚ーゲシュタルトをめぐる心理学と哲学(村田)。以上の発表とそれを巡る議論を通して、感性的認識の学としての美学は、古代の存在論から現代の情報理論に至るまでの人間の経験に即した認識とそれに基づく人間存在の意味を問う学問であることが際立たされたように思われる。それゆえ美学は美や芸術といった特殊な対象領域に限定されることはできず、常に他の領域に対して開かれた学問でなければならないということが改めて確認された。この視点に立つ時、美学が従来主たる研究対象としてきた美と芸術の世界も、決して人間的な生から孤立した特殊文化領域に閉ざされたものではなく、むしろ特有の存在方式を有すことによって却って文字通り歴史的な人間存在の特性を端的に示す世界であることが明らかになる。本研究で発表された成果はすでに各人によって公表されつつあるが、われわれはさらに二年間の成果を纒めた論集を今夏出版の予定である。
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