研究課題
“イエ"制度が実質的な意味をもたなくなりつつある今日、個人がどのようなネットワークを維持しているかが重要な課題であるといってよい。ネットワークを形成している資源に大別して、フォーマルな資源とインフォーマルな資源が存在する。わが国の場合、インフォーマルな資源とくに家族が個人の全生活の安定を保障してきたが、家族の相対的重要性がゆらぐにつれて、友人のウエイトが増しつつある。友人には職場・学校・サークル・親族その他を通じて形成されており、イギリスの研究によれば、個人が依存しようとするとき、まず配偶者、次いで子ども、その他の親族、友人、近隣のような順序で選ばれるという一種の上下階梯補償モデルが存在する。われわれが、日本の都市の中でもっともフォーマルなサービス資源が豊富に用意されている武蔵野市に居住する60歳から80歳までの男女500名を対象に面接調査を実施したところ福祉公社の利用者は全体としてみれば少なく、自立度が高い。一つには所得階層が高く、夫婦だけで、もしくは個人ひとりでも自立しようという現状の反映であろう。また一方では、子どもとの距離も比較的近く、友人・隣人との交際もサポートしているといってよい。男女を比較すると、男性は職場および学校を媒介として形成された友人が交際のかなめとなっているのに対し、女性の場合は学校もしくはサークルを通じて形成された友人が支えとなっている。生活満足度の面からみると、所得、健康、友人関係に対する満足度は男女ともに高い。フォーマルなサービス資源は直接的に現状では役立っていないにしても、背後において精神的安定の支えとなっていることが伺えた。
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