研究分担者 |
夫馬 進 京都大学, 文学部, 助教授 (10093303)
気賀沢 保規 富山大学, 教養部, 教授 (10100918)
佐原 康夫 滋賀大学, 教育学部, 助教授 (30187281)
吉本 道雅 京都大学, 文学部, 助手 (70201069)
松井 嘉徳 島根大学, 法文学部, 助教授 (00202317)
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研究概要 |
本研究でいうところの中国出土文学資料とは甲骨文・金文,簡牘,石刻,敦煌・トルファン文書,明清档案を指し,研究を遂行するに当たっては上記資料別に5つの研究班を組織した。初年度の平成3年度は各研究班ともに史料の収集整理に重点をおいたが,その間に得られた新知見のうち注目すべきものとしては次のようなことが挙げられる。 1 金文の中でも数量の多い冊命金文は西周時代の政治制度史研究の重要な史料として以前から多くの研究者によって取上げられてきたが,従来は記事のみを重視して文書学からする考察はほとんど行われなかった。そこで冊命金文を古文書学的に分析し,様式分類することにより個個の作命金文の性格とその史料的価値を明確にした。 2 新発見の敦煌漢簡は本年度になって図録が公刊され,ようやく居延漢簡との比較研究が可能となってきた。まだ概観の段階で詳細な檢討を経なければならないが,記載様式において両者の間に少なからざる差異のあることが認められる。ほぼ同じような地域,同様な機関の政府文書でありながら記載様式の相違はいったい何を意味するのか,簡牘古文書学の今後の重要な課題の一つである。 3 吐蕃支配期(786ー845)に作成された敦煌文書は,年次が十二支で記されていて絶対年代を推定することが極めて困難であった。しかし年代判定の規準となる僧尼名簿を見出したことや,更には文書の表紙と紙背の関係に注目するなどによって多くの文書の作成年次を確定することが可能となり,文書の史料的価値を高めることができた。 以上はいずれも出土文字資料を古文書として扱い,古文書学の視点から考察することによって始めて得られたものである。なお明清の档案や石刻類についても,文書の様式による分類法を検討中である。
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