研究概要 |
当初の計画に基づいて,以下のような研究会をもった。1991年9月14日には全員で研究打合せの会合,10月5日には堂本分担者による報告,11月2日にはカ-ン氏による報告,12月14日には西島分担者による報告,1992年1月23日には陳分担者による報告。この間,11月30日と12月1日には神戸大学において国際開発学会第2回全国大会が開催されたが,研究代表者と研究分担者の全員がこれに出席し,研究代表者と堂本分担者は「開発政策支援型援助」について研究報告を行った。この内容は近く学会誌に掲載される予定である。また,研究代表者は11月に開催された笹川平和記念財団主催の「ベトナム,ラオス,カンボジアの復興と経済開発」に関する会議に参加し,松永分担者はモンゴル援助検討会と移行経済研究会に出席して,それぞれアジアの最貧国経済について知見を深めた。 以上のような研究経過を通して以下の事柄が明らかになった。最貧国の経済開発戦略としては,将来の工業化を視野に入れた場合,次のような前提条件を今から用意しておくことが必要である。すなわち,(1)農業部門の生産性を高め,農民の購買力を増大せしめることによって国内市場を拡大すること,(2)一次産品輸出を振興することによって外貨獲得手段を充実すること,(3)マンパワ-・トレ-ニングに注力し,人的資源の学習効果を喚起すること。従って,開発援助政策としては,(1)農業インプットの提供、農業技術のトランスファ-,(2)自然資源の開発とその積極的な輸入促進,(3)教育施設,教育機材の供与,専門家の派遣,研修生・留学生の受入れ等が重要である。アジア最貧国の場合,その置かれている外部環境(米国市場の後退,ASEAN,中国との競合)から見て発展への展望は決して明るくない。それ故,援助を梃子として前提条件を整備しておくことがとりわけ肝要である。
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