研究概要 |
研究分担者のうち2人(松永宣明と堂本健二)がモンゴルに行き,現地調査を実施した。その内容は,帰国後,研究会で報告されたが,同時に来年度中に論文(英文と和文)として出版される予定である。また,同人は,本年に東京で開催された「ベトナム,ラオス,カンボジアの経済開発に関する国際会議」に出席して,沢山の貴重な情報を得ることができた。研究代表者と研究分担者の1人(加藤弘之)は中国に行き,現地調査を実施した。その内容も研究会で報告され,本年度中に論文としてまとめられる予定である。1年間にわたって米国留学していた研究分担者の1人(林忠吉)が帰国したので,米国における経済開発問題に関する研究の動向,特に最貧国のそれについて研究会で報告した。そのほか,各分野の研究分担者が各自の研究を報告し,全員で議論して問題を詰めた。その内容を要約すると,以下の通りである。 (1)現在,アジア最貧国における共通の問題は,市場経済への移行にある。(2)それに成功するためには,政府主導の市場・組織形成と人材育成が不可欠であるが,これにはかなりの時間がかかる。(3)したがって,安全な市場自由化・民営化を性急に要求する世界銀行やIMFのアプローチは,アジア最貧国にとって適当なものとは言えない。(4)むしろ,戦後の百本経済の経験が役に立つ部分が多い。(5)しかし,同時に問題な点は,日本には当時既に効率的な市場・組織があったのに対して,アジアの最貧国には市場・組織は未だに無く,これから作っていく必要があることである。(6)この点で,中国におけるこれまでの市場経済化の経験は、参考にできる点が多い。(7)また,社会主義体制下で最優先されてきた人的資源開発は,アジア最貧国が共通に持っている経済開発上の利点であり,これを今後いかに活用して経済開発を進めていくかが重要な点である。
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