経済統合に伴う地域産業の再編成ーEC加盟とスペイン経済ー

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03301098
• 研究機関: 明治大学
• 研究代表者: 長岡 顕 明治大学, 文学部, 教授 (50061990)
• 研究分担者: 間宮 勇 明治大学, 法学部, 助手 (00202333) ; 楠 貞義 関西大学, 経済学部, 教授 (30067714) ; 戸門 一衛 常葉学園大学, 外国語学部, 助教授 (30188718) ; 中川 功 拓殖大学, 政経学部, 助教授 (30188891) ; 松橋 公治 明治大学, 文学部, 助教授 (30165849)
• キーワード: ヨ-ロッパ共同体 / スペイン経済 / 経済統合 / 地域産業 / 企業立地インセンティブ / 地域開発

研究概要

今年度は分担課題に関する既往の研究成果の整理と与察的な統計資料の解読に努めた。スペインの既存産業部門はEC加盟と経済統合の具体化によって産業部門毎に急速に再編成過程が進歩している。醸造業においては中小零細業者の淘汰が協同組合の設立と同時並行的に進んできている。自動車産業部門では欧米・日本の資本参加が再編成を促進させ、ヨ-ロッパにおける小型車生産の拠点工場化となってきている。家庭電気製造においても同様な動きが顕著である。また、農業部門では北西部における離農・脱農が急激に進行し、地域農業の崩壊の兆しが表面化してきて。これに対し、地中海沿岸地方では構造政策事業業の成果によって灌漑施設園芸農業の新興産地化がEC加盟によって加速度的に進行している。
こうした産業部門の再編成はマクロな経済政策のもとで進められている。直接投資を中心にした外資導入は経常収支問題を改善し、さらに、EC加盟諸国に先駆けて実施された資金移動の自由化(1992.2.1施行)は経済成長率の持続を可能ならしめる措置として評価されている。外資や国内民間資金の投資には地域的不均衡性が顕著であるが、スペイン政府の地域開発企業立地インセティブとEC地域開発基金の運用はこの幣害を縮小・改善する役割を担っている。1992年の各種イベントに関連した大規模な公共事業によってインフラのなかでも輸送・通信部門の改善に寄与しているが、これらが地域開発へどのように適用されるか、大きな課題になりつつある。
本課題はスペイン産業論を中心とするものであるが、再編成過程は同時に労働環境を含む労働界の動向にも影響を与えており、次年度には労働事情、労使関係にも注目する必要がある。

研究成果

• [文献書誌] 長岡 顕: "スペイン北西部ガリシア地方の農業事情" 駿台大学. 82. 131-159 (1991)
• [文献書誌] 松橋 公治: "産業の「空洞化」と自動車産業地域の再編成ー海外現地生産の拡大と国内生産体制の再編成を中心にー" 明治大学人文科学研究所紀要. 31. 39-73 (1992)
• [文献書誌] 間宮 勇: "地域経済統合とGATTースペインのEC加盟を中心にー" 貿易と関税. 40ー2. 43-57 (1992)
• [文献書誌] 中川 功: "EC加盟後のスペイン南部農業の現状" 土地制度史学会・1991年度秋季学術大会報告要旨. 30-32 (1991)
• [文献書誌] 川口 太郎: "都市における生活行動研究の視点" 人文地理. 43. 348-367 (1991)
• [文献書誌] 川口 太郎: "現代都市における生活時間と余暇活動" 住宅・都市問題研究論文集. 18. 179-204 (1991)
• [文献書誌] 戸門 一衞: "躍進するスペインをリ-ドする社会労働党政権" 『国境を越えた社会民主主義』(新田俊三編著,日本評論社). 109-168 (1991)
• [文献書誌] 戸門 一衞: "スペインにおける労働組合" 海外労働時報. 180. (1992)
• [文献書誌] 戸門 一衞: "ECへの統合:スペインからの視座(その2)ースペイン農業の構造変化とバレンシア柑橘農業ー" 常葉学園大学外国語学部紀要. 7. (1992)
• [文献書誌] 楠 貞義: "現代スペイン経済・社会について(その1)ー経済安定化計画策定(1959年)から第1次石油危機襲来(74年)までー" 大阪市立大学経済学雑誌. 92. 82-109 (1991)
• [文献書誌] 楠 貞義: "現代スペイン経済社会について(その2)ー第1次石油危機襲来(1974年)から社会労働党政権誕生(82年)までー" 関西大学・経済論集. 41. 57-79 (1992)
• [文献書誌] 長岡 顕編: "ECとスペイン農業" 文部省科学研究費国際学術研究・共同研究報告書, 222 (1991)