研究課題/領域番号 |
03301098
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長岡 顕 明治大学, 文学部, 教授 (50061990)
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研究分担者 |
楠 貞義 関西大学, 経済学部, 教授 (30067714)
深沢 安博 茨城大学, 人文学部, 助教授 (60136893)
戸門 一衛 常葉学園大学, 外国語学部, 助教授 (30188718)
間宮 勇 明治大学, 法学部, 専任講師 (00202333)
松橋 公治 明治大学, 文学部, 助教授 (30165849)
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キーワード | ヨーロッパ共同体 / スペイン / ヨーロッパ地域開発基金 / 企業立地インセンティブ / 州政府の権限拡大 / ヨーロッパ社会憲章 / 進歩のための提言 / 地域産業の淘汰 |
研究概要 |
ヨーロッパを覆う長期化した経済不況はスペイン国民経済にも大きな影響を与えてきたいる。1992年前半までは各種の国際的イベント開催に伴う公共投資によって経済成長を支えてきていたが、後半期からこうしたスポット的な景気浮揚策の限界を露呈してきた。ドイツの高金利政策はスペインペセタの下落を招き、さらに外資が撤収の方向を打ち出すにつれ、関連業界の低迷が表面化した。その結果、失業者数は300万人台に達し、産業構造のリストラクチャリングよりも就業機会の創出が緊急課題となった。こうした事態はスペイン経済の構造的な脆弱性を象徴するものであった。 スペインの大半はヨーロッパ地域開発基金を利用した企業立地インセンティブ適用地域に指定されており、基金運用の政策立案・事業の遂行にいたるまで州(地方)や自治体がイニシアティブを握ることになった。州政府は文化・社会政策から経済政策立案に重点をシフトし、外資導入を目的にした海外事務所を設置するなど独自の政策を実施してきている。これは、EC統合は一方では州政府の権限拡大に寄与する役割を演じつつあることを示唆している。 ヨーロッパ社会憲章を国内に適用するに当たって政府は労使協調路線を提案したが、労働界は共同で代替的な「進歩のための労働組合の提言」を発表し、緊張関係がさらにたかまりつつある。さらに、共通市場実現を直前にしたECの対米農産物協定の部分的な妥協は保守的な農民団体も政府批判に転じており、北部鉱業資源の破棄政策に対する非難は地域的ゼネストへと発展している。EC共通経済政策の適用は労働界の共同歩調を促進させるとともに、地域産業の淘汰へ波及してきている。
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