研究概要 |
サポニン組成の遺伝性に着目し、本研究では大豆起源種の解明と遺伝資源の確保並びに野生種の作物晃を次のようにして試みた。すなわち、地域を異にする在来栽培大豆(G.max)、採取地域を異にする野生大豆(G.soya)、多年生野生大豆(G.tabacina等)、これらの交配種子およびマメ科種子を試料にしてサポニン分析、未確認成分の構造解析および糖鎮の遺伝解析を行った。その結果、従来のサポニンAグループ成分は栽培大豆(G.max)と野生大豆(G.soja)にしか検出されず、栽培大豆の起源種はG.soyaであることが裏付けられた。しかも共優性遺伝の関係にあるAaとAb成分においては栽培大豆が主にAa型であるのに対し、野生大豆(G.soja)は主にAb型であった。これらの地域的分布から栽培大豆と野生大豆の比較考察を行った。注目されることは、Aグループサポニンは大豆食品の量的摂取を妨げる成分で、その欠の係統を発見することができ、重要な遺伝資源として確保できた。さらに糖鎮の遺伝解析から未確認Aグループ成分をみつけ、その構造を明らかにすることができた。さらにBとEグループサポニンを調べた結果、これらのサポニンはいずれもアーテファクト成分で、その真正サポニンはsoyasapogenol BのC-22位にDDMP(2,3-dihydro-2,5-dihydroxy-6-methyl-4H-pyrane-4-one)がアセタール結合した構造であることを明らかにした。これら親規サポニンをαg,αa,βg,βa,γg,γaと命名した。このDDMPサポニンはマメ科種子に広く存在し、その上胚軸(epicotyl)に極在していたが、大豆では上胚軸以外の子葉維管束にも存在していた。この子葉サポニン組成において、野生大豆に幅広い変異がみられたのに対し、栽培大豆の変異は極めて狭い範囲であることがわかった。以上の結果から栽培大豆の起源種の推定と重要な遺伝資源の確保および付加価値の高い野生種を特定することができた。
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