研究課題/領域番号 |
03304020
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研究機関 | 東京水産大学 |
研究代表者 |
隆島 史夫 東京水産大学, 水産学部, 教授 (60041703)
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研究分担者 |
出口 吉昭 日本大学, 農獣医学部, 教授 (60058906)
小川 和夫 東京大学, 農学部, 助教授 (20092174)
鈴木 譲 東京大学, 農学部, 助教授 (40107412)
青木 宙 宮崎大学, 農学部, 教授 (00051805)
室賀 清邦 広島大学, 生物生産学部, 教授 (30011993)
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キーワード | シマアジ / キジハタ / マダイ / ガザミ / 仔稚 / 免疫グロブリン / リンパ球 / 母子免疫 |
研究概要 |
増養殖対象魚介類の種苗を健全に育成する技術開発を意図し、専ら基礎的立場から考究した。その結果、平成3年度においては次のような重要な事象が確認された。(1)シマアジ仔魚の大量死亡をもたらすウイルス性神経壊死症の原因ウイルスが同定され、親から移る垂直感染であることが判明した。(2)キジハタ仔稚魚でも同症が発生するが、蛍光抗体法による診断技法が確立した。(3)ガザミ幼生に発生するビブリオ病原因菌は甲殻類固有の病原体であることが判明した。(4)シマアジ稚魚においてブリの類結節症と同じ細菌が感染することが認められた。(5)ヒラメ仔稚魚白血球の貪食能を、本研究で新たに購入した機器による化学発光法によって測定する方法を確立した。(6)海産魚のエドワジェラ症原因菌であるEdwardsiela tardaおよびビブリオ病原因菌Vibrio anguillarumの簡便、迅速な同定法を検討し、Polimerase Chain Reaction法が適用できることが判明した。すなわち、病因菌から特定遺伝子を得て、その断片DNAを増幅し、本法によって感染魚の細菌を同定するもので、小型個体や飼育水からも病原体を迅速に検出できる。(7)マダイ卵仔稚魚における生体防御機構の解明を図るため、免疫グロブリン(IgM)を精製してこれに対する抗体を得て、卵や仔稚魚からIgMを抽出した。その結果、精製されたIgMは78Kと74KのII鎖、ならびに26KのL鎖からなること、卵や仔稚魚からに抽出物に抗IgM抗体と結合する分子が存在すること、胸腺原基は孵化後5日に出現し、30日目にはリンパ球が分化することなどが判明した。 以上、本年度は仔稚魚における大量死亡原因が病源微生物によることを把握するために、明確な診断技法を確立した。また、仔稚魚における防御機能の発育程度を究明し、母子免疫機構の存在する可能性を明らかにした。一方、仔稚期における栄養要求がほぼ明らかになり、それらの欠陥によって疾病が誘発される可能性が高いことも示唆されている。次年度においては、健康診断技法の確立と母子免疫の活用方法、あるべき栄養条件や環境条件についてさらに解析し、健苗育成の基礎を築くことを計画している。
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