情報発現・伝達におけるプロテアーゼの役割と病態

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03304029
• 研究機関: 名古屋市立大学
• 研究代表者: 佐々木 實 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (10080003)
• 研究分担者: 木南 英紀 順天堂大学, 医学部, 教授 (10035496) ; 高橋 健治 東京大学, 理学部, 教授 (70011533) ; 岩永 貞昭 九州大学, 理学部, 教授 (90029942) ; 鈴木 紘一 東京大学, 応用微生物研究所, 教授 (80011948) ; 勝沼 信彦 徳島文理大学, 健康科学研究センター, 教授 (50035375)
• キーワード: プロテアーゼによる情報発現 / 筋組織特異的カルパイン / プロガストリンの活性化 / 血球内凝固因子 / 心筋梗塞巣活性化カルパイン / アミロイドジェニックプロテアーゼ / カテプシンBの抗原阻囎への関与 / トランスゴルジ膜結合性プロセシングプロテアーゼ

研究概要

「情報の発現・伝達におけるプロテアーゼの役割と病態」につき平成4年度に進歩がみられた分野は次のようであった。
1.プロテアーゼ、生理活性物質の遺伝子発現、制御、その異常 鈴木は蛋白質レベルでは見出されなかった新しいカルパイン遺伝子が骨格筋と平滑筋に存在することを見出し、骨格筋では94k大サブユニットのものが、平滑筋ではカルモジュリンドメインを欠損するタイプI型とそれを有するタイプII型の発見することを示した。
2.プロエンザイム、エンザイムインヒビター前駆体のプロセシング、輸送、その異常 松田はラット肝におけるプロエンザイムの活性化がトランスゴルジのカルシウム依存性膜結合性がプロセシングプロテアーゼによることを示し、高橋は胃におけるプロガストリンのプロセシングもカルシウム依存で且つC端側の2種塩基性アミノ酸を確認するエンドペプチダーゼによるものであることを示した。佐々木は活性化カルパイン特異抗体を用いて心筋梗塞巣を染色し、病巣に一致した活性化カルパインを検出した。石浦はβアミロイド前駆体蛋白質の代謝でアミロイド蛋白質非成形経路ではカテプシンBによる消化が関与することを指適した。
3.プロテアーゼによる情報の発現、モジュレーション、特殊蛋白質との相互作用、その異常 岩永はカブトガニの血球内補体系様凝固系の凝固開始点におけるC因子、G因子の活性化は自己消化的であり、それ等の反応にそれぞれLPSとβ-D-ダルカンが関与していることを示した。
4.プロテアーゼの新たな生理機能を検索 勝沼はマクロファージによる抗原のプロセシングが、(1)カテプシンBの基質特性とMHCクラスIIの抗原特集性とで一致すること、(2)プロセシングがカテプシンB特異的インヒビターで完全に阻害される、ということからカテプシンBによっておこることを提唱した。

研究成果

• [文献書誌] Saido T.C,Shibata M.,Takenawa T.,Murofushi H.and Suzuki K.: "Positive regulation of μ-calpain action by polyphosphpinositides" J.Biol.Chem.267. 24585-24590 (1992)
• [文献書誌] Shigematsu Y.,Miyata T.,Higashi s.,Miki T.Sadler J.E.and Iwanaga S.: "Expression of human soluble tissue factor in yeast and enzymatic properties of its complex with factor VIIa" J.Biol.Chem.267. 21329-21337 (1992)
• [文献書誌] Kageyama T.,Ichinose M.Tsukada S.,Miki K.,Kurokawa K.,Koiwai O.,Tanji M.,Yakabe E.,: "Gastric prpcathepsin E and progastricsin from guinea pig" Athauda S.B.P.and Takahashi K.J.Biol.Chim.267. 16450-16459 (1992)
• [文献書誌] Nishimura Y.and Kato K.: "Expression of mouse cathepsin L cDNA in saccharomyces cerevisiae:Evidence that cathepsin L is sorted for targetin to yeast vacuole" Arch.Biochem.Biophys.298. 318-324 (1992)
• [文献書誌] Kominami E.,Ishido K.,Muno D.and Sato N.: "The Primary structure and tissus distribution of cathepsin C" Biol.Chem.Hoppe-Seyler. 373. 367-373 (1992)
• [文献書誌] Walker J.A.,Sakaguchi T.,Matsuda Y.,Yoshida T.and Kawaoka Y.: "Location and charactre of the cellular enzyme that cleaves the hemagglutinin of a virulent ayian influenza virus" Virology. 190. 278-287 (1992)
• [文献書誌] 鈴木 紘一(分担執筆): "食品の生体調節機能" 学会出版センター, 11 (1992)
• [文献書誌] 西村 行生,加茂 敬太郎(分担執筆): "日本生化学会編、新生化学実験講座 第一巻 タンパク質VI 合成および発現" 東京化学同人, 11 (1992)