研究概要 |
前年度に引き続き,ローマ都市ポンペイの形成過程と都市と周辺農村部の関係について研究を進めた。代表者角田は古代都市の形成過程を比較史的観点から研究し、ポンペイが成立する基礎的条件について検討した。浅香はポンペイ周辺のウィラに関して,これまで出されている全ての図版を収集し,形態と機能の分類を行った。その上でウィラの建築形態の発展史に一定の見通しを得た。川西は,ポンペイの建築資材の加工に使用された工具の分析を通じて,建築技法の発展の過程に関する研究を行った。坂井は,市内に残された前1世紀初頭の都市役職者選挙に関する銘文を研究し,ローマ人入植者の都市形成への関わりを論じた。またポンペイ城壁の編年に関して資料を集め、城壁の修築とナポリ湾一帯の政治史的背景との関わりを研究した。西田は,ポンペイ市街地内の特定の街区の市街化の問題を取り上げ、部屋の用途に関しての新知見を得た。研究協力者の堀は,ポンペイ市街地における家屋の二階部分の用途に関して,定説とは異なる新たな見解を得た。また同じく力丸は写真資料に基づき,道路の敷石の修復に関して数理統計学的観点からのアプローチを試みた。これらの知見は定期的な研究会合や各種の学会等において,各研究分担者が発表した。これらの研究成果は一部(財)古代学協会刊行の欧文誌Opuscula Pompeiana III上に発表された。
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