研究概要 |
<AlGaAsーAlAsタイプII型量子井戸中の励起子ー正孔散乱> タイプII型量子井戸超格子では、井戸層における励起子の閉し込め効果による高い光非線形性と電子の実空間ΓーX散乱による高速の電子緩和とが両立している。従って、この構造は、超高速光非線形素子として優れた系である。しかし、長寿命の正孔の影響が重要な問題とされている。縮退四光波混合により緩和速度の励起強度依存性を調べると、特徴的なのは,低い励起強度において、それぞれの傾きが異なること、そしてO.2μJ/cm^2付近に折れ曲がりがあり、これより高い励起強度において傾きがほぼ一致することである。実際の正孔密度を評価するために、共鳴励起によるポンプ・プロ-ブ実験を同時に行うと、励起子位相緩和と長寿命の正孔密度との密接な関係が明確となり、励起子が井戸層中に生き残った正孔によって散乱されていることがはっきりとした。 <Bil_3における超高速コヒ-レント現象の観測> 層状結晶のBil_3の間接励起子吸収端近傍の透明領域には、積層欠陥による励起子吸収線、R、S、Tが見られる。これらの吸収線の超高速時間応答を強励起条件下において、60fsのポンプ・プロ-ブ法によって調べた。積層欠陥励起子R、S線および透明域(630nm)についての温度は10Kにおける吸収の時間変化に周期およそ300fsの振動が観測されたが、この振動は数十psにもわたって続く。この振動は、プロ-ブ光の透過スペクトル全体の周期的なスペクトルシフトである、周期300fsは、14meVのエネルギ-に対応するが、これはBil_3のTOモ-ドのフォノンエネルギ-に一致する。従って、この振動現象はBil_3の格子振動が直接的に時間変化として観測されたもので、コヒ-レントフォノン効果だと考えらる。
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