研究概要 |
〈CdSe中の非平衡電子分布の観測〉フェムト秒ポンプ・プローブ分光法によりCdSeの伝導帯中に高いエネルギーを持った電子系を励起し約50fsの間、非平衡な電子分布を観測した。 〈AlGaAs-AlAsタイプII型量子井戸中の励起子ー正孔散乱〉井戸層の伝導バンド下端のГ点よりも障壁層のX点のほうがエネルギー的に低い位置にあるタイプII型量子井戸においては、電子と正孔を空間的に分離する事ができ、この事を利用して励起子と正孔の散乱速度を励起子の位相緩和を測定する事により決定した。 〈BiI_3における超高速コヒーレント現象の観測〉層状結晶BiI_3の間接励起子吸収端近傍の透明領域には、積層欠陥による励起子吸収線、R,S,Tが見られる。フェムト秒レーザを用いた強励起条件下において、積層欠陥励起子R,S,Tのコヒーレントな光学応答ならびに、周期およそ300fsの振動を示すコヒーレントフォノン効果を観測した。周期300fsは、14meVのエネルギーに対応するが、これはBiI_3のTOモードのフォノンエネルギーに一致する。 〈ZnP_2におけるフェムト秒時間分解分光〉黒色ZnP_2半導体結晶は、その吸収スペクトルにn=7にも及ぶワニエ励起子系列が観測される興味深い物質である。フェムト秒時間分解分光法によりZnP_2中ワニエ励起子において、励起子間干渉ならびにポラリトン分枝間干渉に起因する2つのタイプの量子ビート効果の観測に成功した。レーザースペクトルがn=2、3、4の励起子吸収線をカバーするように同調させて測定を行うと、時間原点に、大きなピークに加えて数ピコ秒に及ぶ振動波形が観測された。この振動波形は励起子間の干渉に起因する量子ビートである。レーザの中心波長をn=1励起子に同調させて測定する際には、周期がしだいに広がっていく奇妙な振動構造を示した。この振動構造は光パルスの伝搬効果を反映したポラリトン分枝間の干渉効果によるものである。
|