研究概要 |
1)KEKの陽子シンクロトロンを用いて反陽子の液体ヘリウム中での消滅時間分布を測定し,ヘリウム中に静止した反陽子の約3%が長寿命の準安定状態にトラップされていることを発見した。通常,反陽子を物質中に止めると10^<ー12>秒で消滅してしまうことが知られており,我々の発見した状態は異常なものである。準安定状態の寿命は単一の指数分布では表されず,最長の成分は約3μsである(発表論文1,2)。 2)上記の成果を更に発展させ,反陽子の異常長寿命状態生成の機構を理解するため,CERNの低速反陽子蓄積リング(LEAR)で反陽子をガス中に止めて消滅時間分布を測定する実験を行った。このために,カウンタ-システム,ガス標的システム,デ-タ収集システムを新たに構築した。その結果(発表論文3),ガス中でも液体中で観測されたのとほぼ同じ寿命の長寿命状態が存在することを見いだした。分子間距離,温度などの条件が非常に異なるにもかかわらず,ほぼ同じ寿命の準安定状態が存在することが分かったことは,今後の研究を進める上で重要である。また,不純物の効果, ^4Heと ^3Heの違いなどについてのデ-タも収集した。 3)液体からガスまで連続的に条件を変えて測定をするため,ヘリウム・フロ-・クラオスタットを購入し,来年度の実験に備えた準備を完了した。
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