本研究の目的は、超音波計測法と電子顕微鏡法などを用いて、マクロとミクロの両方の立場から、岩石・鉱物内部の残留歪みを検出し、天然での鉱物の変形過程を理解することにある。さらに、この研究方法を、地球科学的な現象とくに岩石や地層の変形を解析することに応用することを目的としている。 本年度は、以下に述べるような研究を主に行った。 1。超音波計測:超音波計測器を購入し、そのテストを主に行った。その結果、岩石や鉱物中に見られるクラックを比較的容易に識別できることが分かった。手初めとして、光学的に歪みをもった鉱物の観察を行ったが、現時点ではその歪みに対応する像は、明確には得られていない。 2。電子顕微鏡による歪み観察:電子顕微鏡を購入し、その分解能などのチェックを行った。さらに、歪みを計測するための観測法や、局所的な対称性の変化を明らかにする収束電子回折法などが、行えることを確認した。 現在、これらの方法で、標準試料の観察を継続中である。 3。相変態と歪み:輝石の相変態への歪みの効果を検討し、この相変態が熱弾性型マルテンサイト変態出あることを明らかにした。 4。歪複屈折の研究:鉱物の歪み分布について、光学顕微鏡による観察を行った。特に、ダイアモンドについて観察を行い、歪み複屈折を観察した。また、歪み複屈折と内部構造の対応について検討するため、ダイアモンドの累帯構造について、ルミネッセンス顕微鏡を用いて観察を開始した。
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