本研究の目的は、ミクロとマクロの両方の立場から鉱物内部の歪みを検出し、天然での鉱物の歪みの原因を理解することである。本年度は、主として以下に述べるような研究を前年度に引き続き行った。 1。光学異常を示す鉱物の対称性:光学異常を示す鉱物、とくにエメラルドについて、その対称性の低下に関する研究を前年度に引き続き行った。その結果、このエメラルドは、従来知られている六方対称ではなく、三斜晶系に属するものであることを初めて明らかにした。したがって、このエメラルドに見られる光学異常について、対称性の低下か局所的な歪みによるものかを識別できるようになった。 2。相変態への歪みの影響に関する研究:前年度に引き続き、相変態時に歪みの影響について考察した。その結果、たとえば、変成岩の主要鉱物である珪線石にみられる結晶方位のわずかに異なる領域からなるドメイン構造が、相変態時の界面の歪みを最小にするために生じたものであることを明らかにした。この結果、このドメイン構造は、変成岩中での変形によって形成したものでないことが明らかとなった。 3。最終年度であるため、四年間のまとめを行った。その詳細は、最終報告書にまとめられている。まとめの結果、天然の鉱物に観察された歪み分布の多くは、従来考えられてきた以上に、鉱物の形成過程や相変態過程の影響を大きく受けていることが明らかとなった。また、その影響は、歪み分布や内部組織の特徴などから、見積もることが可能なものであることが明らかとなった。
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