研究概要 |
本年度は、前年度に設計、作製した電子線ビーム励起型の有機金属分子線エピタキシー(MOMBE)装置を用いて、目的とする選択的結晶成長を達成するために必要な改良を行うと共に、動作の確認と予備的な成長を行った。まず、電子線照射が結晶成長におよぼす効果を、特に次の3点に留意した。 (1)電子線照射の結晶成長への効果として局部的な温度上昇の効果も期待出来るが,分解能の点から望ましくないと考え,電子線の電流密度が十分小さい電子銃を用いる必要があること、 (2)排気系からの振動が成長系に伝わり電子線の分解能が低下することへの対策、 (3)低温での成長を行う必要性から、有機金属化合物原料を用いる場合に予想される炭素混入に対する対策。これらに対する対策として、 (1)については、原理の確認に主眼を置くこととしてビーム径に関しては不十分であるがビーム径0.2μm、加速電圧10kV、ビーム電流0.6nAの電子銃を用いることにより、(2)に対しては成長系とポンプ系をフレキシブルチューブにより連結することにより、さらに(3)に対しては、当初III族原料としてトリエチルガリウム(TEGa)、V族原料としてアルシン(AsH_3)を用いることを計画しているが、紫外線ランプ励起により活性化した反応性の高い水素を成長中に導入する機構を備えることにより対応することとし、さらに炭素を含まない原料として三塩化ガリウム(GaCl_3)を利用することを想定して、原料温度制御系、配管材質などへの配慮を行った。以上の検討に基づき装置の細部の設計と改良を行い、装置の基本動作として、成長室の到達真空度が1×10^<19>Torr以下であること、電子ビームの電流値が設計通りであることおよび掃引が可能であることを確認した。また、GaAs選択成長の基礎実験としてTRGaを用いたGaの選択成長に取りかかった。
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