研究概要 |
前年度に引き続きSi(111)-7x7清浄表面上へのAlCl_3ガス分子の吸着を行ない、AlCl_3とSi表面の反応初期過程を検討を行った.Si表面上では,AlCl_3分子は解離吸着しCl原子およびAlCl_Xなどの種々の分子種に解離するが,その解離吸着過程を原子レベルで初めて明らかにした.すなわちAlCl_3分子は室温ではAl_2Cl_6分子となるが,これはルイス酸であるためSi表面上で求電子的反応を引き起こす.従って,Si表面上の電子密度の最も大きなレストアトムにまずAl_2Cl_6分子は吸着し,分子内のCl原子は最も電子密度の小さい近接したセンターアドアトムに吸着する.この化学吸着により分子内の結合が弱まり,解離吸着が進行する.実際,吸着したAlCl_X分子がレストアトムの周囲を泳動する現象も見いだされ,レストアトムが吸着過程で決定的な役割を占めていることが示された. このような知見に基づき,表面吸着した単原子・分子の操作を試みた.現在までに,アドアトム直上に吸着しているCl単原子の引き抜き,Si表面上に吸着しているAlCl_X分子の解離,脱離,移動に成功した.これらの単原子分子操作条件を詳細に調べ,その機構について検討した.すなわち,Clの単原子引き抜きについては,電界蒸発機構以外にも,探針-表面の近接相互作用による引き抜き機構の可能性も考慮する必要があること,分子操作については探針による高電界中でAlCl_X分子が分極し,これが電界中での移動,解離,脱離の原因となっている可能性を指摘した.
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