研究概要 |
(1)磁界を重畳した陰極tipー第1陽極間(距離d)のdiode領域と,その後に配置される3電極静電減速レンズの電子光学的特性の計算から,以下の知見が得られた。(1)陰極tipに対する第1陽極の電圧をV_1,diode領域中の有効磁界に対するアンペア回数をNIとすると,diode領域の特性,即ち放出電子線の収束特性,光源位置などはNI/√<V_1>の値によりほぼ一義的に決まる。(2)diode領域の後に配置される3電極静電減速レンズの球面・色収差係数を共に小さくするには,第1ー第2陽極間(距離S)では加速レンズ,第2ー第3陽極間(距離1に規格化)では減速レンズとして用いること,第1,第3陽極が肉厚で第2陽極が肉厚で第2陽極が肉薄の電極形状を採用すること,S及びd/sを共に小さくすることが有利である。 (2)イオンポンプ,タ-ボ分子ポンプから成るドライ排気系を備えた電界放出電子銃(FEG)の組み立ても順調に完了し,当初目標とした10^<ー8>Pa台の超高真空が達成されている。現在,数10μAの電界放出電流が安定に得られるようになっており,枯らし運転を続行中である。 (3)FEGの動作状態(真空度,放出電流など)をモニタ-,コントロ-ルするための回路,及び真空度の異常低下などの異常事態が発生した場合に放電による陰極tipの破壊を防ぐための安全回路の製作も完了し,各機能が正常に動作することの確認を終えている。 (4)本年度購入したエネルギ-アナライザは,装置に実装後,次年度における放出電子線のエネルギ-分布幅の測定が支障なく遂行できるよう性能の確認を行なうと共に,装置全体の電子光学的調整を完了した。 (5)強励磁対物レンズの前磁場で縮小された電子線プロ-ブを後磁場で拡大してプロ-ブ径を測定するためのレンズ動作条件に関する実験を行なった結果,試料位置を適切に選ぶことによって,強励磁モ-ド対物レンズにより支障なくプロ-ブ径の測定が可能であることを確認した。
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