光ファイバが通信システムに導入されるようになり、広域通信網への光通信技術の導入が今後急速に進むと考えられる。通信網を構成する要素は伝送システムと交換システムに大別されるが、交換システムは制御機能が高度な為に、光デバイス技術をどのような考え方でシステム構成に結び付けることが可能となるか見通しが立っていない。本研究では、将来の交換システムにおける光通信技術の適用方法を明らかにし、光統合交換システムの基本的な技術を確立することを目的とした。 本研究は光交換システムの内でも世界的に見てほとんど研究のなされていない光波長多重方式を対象とした。光波長多重方式は光通信信号の広帯域性をもっとも高度に利用するためテラビット/秒の高速信号をスイッチングすることのできる究極の光統合交換方式である。平成3年度は波長多重時多重の実験交換機PPS-2を作成し、損失特性、信号対雑音特性を測定し評価した。その経験から更に規模の大きな光交換機を設計する為の条件を検討し、PPS-2では一段構成であったものを多段に接続して大規模な光交換機を構成できる方式をPPS-3として平成4年度に提案し、実際に試作した。PPS-3はフィルタ部と可変波長レーザ部で構成されており、この基本的な部品を試作するとともに市販の光カップラ部品と組み合わせることにより原理的にはいくらでも光交換機の規模を拡大することが可能である。 PPS-3部品をもちいて多段接続の実験システムを構成し、複数の音声が波長多重の形式でスイッチング出来ることを確認した。PPS-3では600ナノメータ帯から900ナノメータ帯の4種類の波長を採用しており、可変波長レーザ部を制御回路信号で制御し波長変換を実施することで交換動作を実現した。スイッチングに要する時間は5μセカンド程度である。またPPS-3部品を採用してさらに大容量の光交換システムを構成する方式についても実験システムの検討と並行して研究を進めた。それによりPPS-3方式は波長多重技術の特徴を活かし、交換スイッチ間を多段接続するためのリンク構成に波長多重リンクと呼ぶ新しい概念を導入することで、従来考えられていた光統合交換システムよりは一段と簡単な構成で光交換機の通話路を大容量化できる可能性が開けた。
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