研究概要 |
平成3年度,4年度に行なってきた公共空間の利用についてのサーベイ,すなわち建物内の公的な空間における人の「居方」(ある場所に居る時に,周辺の物理・社会的環境,他者とどのような関係をとっているか)に関する調査,及び都市空間のオープンスペース(公園,広場,神社,寺院,街路等)における人の「居方」に関する調査の補足調査を行なった。 これら平成3〜5年度の調査の結果,及び平成3年度以降収集を続けた「人の居方」についての写真・文献資料を元に,人の居場所としての性格・質という点から,住宅(居間等)・建物・都市空間の公共的空間の実態・意味・課題を考察し,以下の結論を得た。 (1)現代の日本の住宅・建物・都市オープンスペースにおける人の居方は,たとえば中国天津の集合住宅や,台湾の都市公園の利用状況と比較した時に,他者との関係の種類,アクセスビリティの許容性の視点からみて非常に限定されたものである。 (2)この背景には,空間に組織あるいは機能を割当てる機能主義的な計画論が,これに相応しくない対象である公共的な性格の空間の計画においても根底の方法論になっていることが大きな原因である。 (3)今後,我が国の住環境・都市空間の中に,多様な居方を許容する真にパブリックな空間を計画していく為には,機能論でも景観論に代表される狭義の環境心理的な視点とも異なる新しい方法論が必要である。
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