研究概要 |
1.多結晶材料におけるΣ3+Σ3+Σ9粒界会合部の安定性 本研究では主としてΣ3粒界やΣ9粒界といった特殊粒界が会合する三重結晶を試験片としてきた.このような結晶方位の試験片に含まれる粒界会合部の安定性を調べるため,再結晶後の銅多結晶において隣り合う結晶粒間の方位差の分布を測定した.その結果,方位関係がΣ3(焼鈍双晶),Σ9そしてΣ27であるような,Σ3^nで整理できる特殊粒界が大部分であることがわかった.また,2つの整合双晶粒界(Σ3{111}粒界)と会合して、Σ3+Σ3+Σ9粒界会合部を構成する三重線部の安定性について調べた.このような粒界会合部は再結晶組織に出現した後さらに焼鈍を続けてもその形状は変化することがなく,きわめて安定な存在であった.Σ9粒界の粒界面方位も特別な方位に限定され,それらは対応格子点の面密度が高い面に一致していた. 2.銅基合金三重結晶における中間温度域でのクリープ破壊挙動 三重結晶における破壊挙動の温度および応力依存性を明らかにするため,今年度は中間温度域でのクリープ変形を行い破壊の様式について検討した.CuAl合金三重結晶試験片を用いて,773Kから923Kの中間温度域で30MPaから40MPaまでの引張応力を加えてクリープ試験を行い破壊の挙動を調べた.この温度域では粒界三重線による粒界すべりの阻止効果が明瞭であり,粒界すべり量は粒界三重線からの距離の増加にともない顕著に増加した.粒界すべりが最大であった地点でのクラックの発生,成長という粒界破壊の様式が観察されたが、破断に至る時間は粒界すべり速度の最大値の逆数に比例することがわかった.これらのことは,中間温度域において三重線部は材料の強化に大きく寄与することを意味する.
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