研究概要 |
1.FeCrNi合金異相双結晶の変形に及ぼす相界面の影響 二相ステンレス鋼に含まれる異相界面が変形に及ぼす影響について調べた。α相(Fe-15Cr-15Ni)とγ相(Fe-30Cr)の単結晶を育成し,それらを拡散接合することによって異相双結晶を作製した.この異相双結晶の引張試験を室温で行い,すべり線の観察を行った.α相とγ相のあいだの方位関係によって相界面が塑性変形に及ぼす影響は変化し,ひずみの適合性が悪い方位関係の場合,γ相の結晶粒は多結晶に類似した変形挙動を示した. 2.FeCrNi合金異相双結晶の高温における超塑性界面すべり 異相界面が高温変形時に果たす役割を明らかにするため,FeCrNi合金異相双結晶のクリープ変形を行って界面で起こるすべりの機構を議論した.異相界面におけるすべり速度は各相の結晶粒界でのすべり速度に比較して10^2〜10^3倍も大きく,二相ステンレス鋼における高温での大きな延性の原因であることがわかった.界面すべり速度は作用するせん断応力の2乗に比例し,その機構は転位の上昇運動によって律速されるα相の界面近傍での容易な粘性流動によって説明することができた. 3.金属と合金の単・双結晶における疲労き裂の発生と伝播 金属疲労に及ぼす結晶粒界の影響を単・双結晶による実験によって調べた.α-CuAlの場合,疲労き裂は結晶粒界に優先的に発生し,その伝播速度は粒内における場合に比較して10^2倍程度速いものであった.また,結晶粒界の構造の違いはそこでのき裂伝播速度を変化させ,エネルギーの高い粒界で疲労破壊はより促進されることがわかった.
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