d電子合金理論に基づく遷移金属基合金の統一設計システムの構築

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03402046
• 研究機関: 豊橋技術科学大学
• 研究代表者: 村田 純教 豊橋技術科学大学, 工学部, 助教授 (10144213)
• 研究分担者: 江崎 尚和 豊橋技術科学大学, 工作センター, 助手 (80160357) ; 川上 正博 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (30016597) ; 森永 正彦 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (50126950)
• キーワード: d電子 / 遷移金属基合金 / 合金設計 / 原子力材料 / 超合金 / 耐熱合金 / 耐食合金

研究概要

耐熱、耐腐食、耐照射などの機能を持つ遷移金属基合金は宇宙、航空、原子力などの分野に不可欠な材料である。これらの合金の統一設計システムを構築するために、本研究は、(1)合金に関する電子構造の計算と合金パラメ-タの算出、(2)実験デ-タの評価と体系化、(3)実証実験、よりなる。本年度はNi、Fe、Ti、Zr基合金について、合金中のd電子のふるまいを基にした2つの合金パラメ-タ、Md(d軌道レベル)とBo(結合次数)を算出した。これと併行して、既存のデ-タのみでは不十分であるため、デ-タベ-ス構築のための基礎実験を、Ni基、Mo基、Nb基、Zr基、Fe基合金およびTiAl金属間化合物について行った。その結果、新たに以下の実験事実が明らかとなり、その一部はデ-タベ-スとして加えられた。(1)NiーAlーRe三元系およびNiーAlーReー(X:Cr,Mo,W)四元系合金の実験から、Ni基超合金では、相安定性の観点からW+Mo+Re量の上限が約4at%であった。またMdーBo図上で、これまでのNi基合金の強度デ-タを整理し、同図上の合金ベクトルを用いて、合理的に合金系を選定できることを示した。(2)可搬型原子炉用材料としてのMo基、Nb基合金の強度が高温硬さから予測できることを示すとともに、高温クリ-プ強度と融点の相関性を示した。また、これらの合金についてNa中浸漬試験による腐食デ-タを得た。これらの実験結果を基に、Nb系としてNiーTaーMoーV(ーZr)系合金を、Mo系としてMoーReーWーZr系合金が有望であることを示した。(3)原子炉用Zr合金について、水素過電圧、オ-トクレ-ブ腐食試験、高温硬さ、ヤング率測定を行った。その結果を基に、耐食性とバネ特性が求められるスペ-サ-用として、ZrーFeーRu系が有望であることがわかった。(4)高速炉用オ-ステナイト系Fe基合金の基礎実験の結果、耐照射性、クリ-プ強度の観点からMo+W=5wt%、Ni〉35wt%の条件が必要であることを示した。その他、TiAl、Ti_5Si_3化合物においても基礎デ-タを得た。

研究成果

• [文献書誌] 松木 一弘,川上 正博,村田 純教,森永 正彦,湯川 夏夫: "Na_2So_4ーNaCl混合塩を塗布したNiー10Crー12AlーTaーW系結晶合金の加速酸化" 鉄と銅. 77. 1503-1510 (1991)
• [文献書誌] 松木 一弘,宮崎 省吾,村田 純教,森永 正彦,湯川 夏夫: "レニウムを含むニッケル基単結晶超合金の組織と合金元素の分配比" 鉄と銅. 78. 658-665 (1992)
• [文献書誌] M.Morinaga,Y.Murata,H.Ezaki: "Design and Development of Structural Alloys for Nuclear Applications." Proc.of Int.Symp.on Materials Chemistry in Nuclear Environment(Tukuba).
• [文献書誌] Y.Murata,Y.Takeda,M.Morinaga: "Ductility of High Purity Tial Intermetallic Compound." Materials Transactions,JIM. 33. (1992)
• [文献書誌] 森永 正彦,村田 純教,江崎 尚和: "分子軌道理論により合金設計" 日本金属学会会報. 31. (1992)
• [文献書誌] K.Matsugi,Y.Murata,M.Morinaga,N.Yukawa: "Realistic Advancement for NickelーBased Singl Crystal Superalloys by the dーelectrons Concept." Proc.of 7th Int.Symp.on Superalloys 1992. (1992)