研究概要 |
前年度までに,Ni,Fe,Ti,Zr,Mo,Nb,Cr基合金について,合金中のd電子のふるまいを基にした2つの合金パラメータ,Md(d軌道レベル)とBo(結合次数)を算出した。また,それと併行して,合金設計に必要なデータベースを得るための基礎実験も行った。 今年度は,これらのパラメータ値を基に設計した各合金の特性評価を実験的に行うとともに,前年度に引き続き設計システムの構築に必要なデータベースを得るための基礎実験も行った。本年度得られた成果は次のとおりである。1、Ni基合金について,上述のMdとBoを基にした合金ベクトルの概念を前年度導入したが,この合金ベクトルを用いて,Ni基超合金におけるγ'(Ni_3Al)相の体積率がよい精度で予測できることが明らかとなった。これはNi基合金の設計にとって大変有用なことである。今後さらに,この合金ベクトルを用いて,γ'相と合金地相であるγ相への各元素の分配比を予測する方法を検討する。また、Reを含むNi基合金について,各元素の分配比に関して,各元素間の相互作用を明らかにした。2、オーステナイト素Fe基合金については,これまで予測が困難であったクリープ強度特性について,高温引張強度と常温引張強度の差を用いることにより予測可能であることを明らかにした。この事実と,上述のd電子パラメータを基に予備設計を行い,48Fe-35Ni-15Cr-Mo-W-Nb-Ti-V-C-N系の有望合金2種を得た。3、NB,Mo基合金については,前年度設計した各合金について,Na中腐食試験を行うとともに,三点曲げ試験を行い,Mo基合金の機械的特性に対するReの効果を明らかにするとともに,Nb基合金のNa腐食データを得た。4.その他,Cr基,Zr基合金について,2元系,3元系合金を用いた基礎実験を行って設計のデータベースとする基礎データを得た。
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