金属中のヘリウムと照射欠陥の相互作用に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03402053
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 松井 秀樹 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50005980)
• 研究分担者: 矢野 信三 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (60005915) ; 箕西 靖秀 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (70005958) ; 中嶋 英雄 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (30134042)
• キーワード: 核融合炉材料 / バナジウム合金 / ヘリウム効果 / ヘリウム脆性 / 照射効果 / トリチウムトリック

研究概要

1.トリチウムトリック法によるヘリウム注入材の電顕観察(松井、中嶋、箕西)
バナジウムに原子寸法因子を系統的に変化させた溶質元素を添加した2元合金を作製、トリチウムトリック法によりヘリウム添加を行った。本研究において、鉄やクロムといったバナジウム内で寸法因子が小さな溶質元素を添加した合金では、ヘリウム添加による降伏応力の増加著しく、かつ脆化の割合が小さいことが明かとなったが、このように原子寸法因子と脆化・硬化との明瞭な相関が明らかになったのは本研究がはじめてである。電顕観察によれば、寸法因子の小さい溶質原子を含む合金では結晶粒内に多数の転位ル-プが観察されると同時に、粒界のヘリウムバブルの密度は低い。粒内の転位ル-プはヘリウムクラスタ-が形成されるときに放出された自己格子間原子によるものと考えられるが、このような相関は寸法因子の小さい溶質原子がヘリウムと強い結合力を持ち、トラッピング作用によりヘリウムの粒界への拡散を妨げると同時に、粒内でのヘリウムクラスタ-形成を助けることによると考えるとうまく説明することができる。
2.トリチウムトリック処理材の変形中ヘリウム放出測定と組織観察(松井、矢野)
バナジウム系2元合金の内、Vー5%Fe等の原子寸法因子の小さい溶質元素を含む合金にトリウチムトリック法によりヘリウム添加を行った試料においては、ヘリウム脆化の程度が比較的軽微で、同時に塑性変形中のヘリウム放出が極めてわずかであることが明かとなった。このことは上で述べたようにヘリウム原子と寸法因子の小さな合金原子との結合力が大きいと推定されることと合わせ考察すると、ヘリウムが結晶粒内に留まっている割合が高いために粒界へのヘリウムの移動が抑制されるためであるとして理解することができる。電子顕微鏡観察によると、これらの寸法因子の小さい合金では多数の転位ル-プが粒内に観察されるが、注意深い観察により多数のヘリウムバブルが存在することが明かとなり、上記の考察を裏付ける結果となった。

研究成果

• [文献書誌] MATSUI,Hideki: "Large swelling observed in a Vー5at.%Fe alloy after irradiation in FFTF" ASTM STP 1125. (1992)
• [文献書誌] MATSUI,Hideki: "Embrittlement of vanadium alloys doped with helium" J.Nucl.Mater.(1992)
• [文献書誌] MATSUI,Hideki: "Microstructural evolution in Vー5%Fe alloy by fast neutron irradiation" J.Nucl.Mater.(1992)
• [文献書誌] Nakajima,Hideo: "Effects of solute addition on swelling of vanadium after FFTF irradiation" J.Nucl.Mater.(1992)
• [文献書誌] MATSUI,Hideki: "Microstructural evolution in vanadium alloys by fast neutron irradiation" J.Nucl.Mater.(1993)
• [文献書誌] MATSUI,Hideki: "Mechanical properties of vanadium alloys doped with helium using various techniques" ASTM STP. (1993)
• [文献書誌] MATSUI,Hideki: "Effects of solute atomic size factor on the swelling of vanadium alloys" ASTM STP. (1993)