研究課題/領域番号 |
03402053
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松井 秀樹 東北大学, 金研, 教授 (50005980)
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研究分担者 |
矢野 信三 東北大学, 金研, 助手 (60005915)
箕西 靖季 東北大学, 金研, 助手 (70005958)
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キーワード | 核融合炉材料 / バナジウム合金 / ヘリウム効果 / ヘリウム脆性 / 照射効果 / トリチウムトリック |
研究概要 |
1.極低エネルギーイオン注入材の組織観際(松井、箕西) 電子顕微鏡観察用バナジウム薄膜試料に1keV、及び100eVという極めて低いエネルギーでヘリウムイオンを注入し、これを電子顕微鏡により観察した。この結果、100eVといふ変位損傷の敷居値エネルギーよりも低いエネルギーで注入した場合には、2×10^<15>He/cm^2という比較的大きな注入量でも観察可能な欠陥は発生しないことなどが明らかになった。一方、1keVのエネルギーでのヘリウムイオン注入では変位損傷が発生するが、この条件での注入では多数の転位ループが発生した。1×10^<14>He/cm^2程度の注入により転位ループを比較的低密度に発生させ、これに100eVでのヘリウム注入を追加して、既存のヘリウムクラスターの成長過程を調べた。100eVでの注入でループに成長が見られたが、その後の電子ビームによる加熱により、欠陥が観察されない領域にもバブルが発生することが明らかになった。 2.トリチウムトリック法によるヘリウム注入材の電子顕微鏡観察(松井、矢野) トリチウムトリック法はトリチウムのヘリウムへの崩壊を利用して材料中にヘリウム添加を行う方法である。従来からバナジウム合金に対してこの方法を適用した研究が多いが、その研究結果は他の方法によるものとは異なることが多い。これはトリチウムトリック法により注入されたヘリウムの存在状態が、核融合炉環境と異なっているためと考えられる。電子顕微鏡による観察で、注入直後に既に結晶粒界には多数のバブルが発生していること、粒内にもバブルや転位ループが多数存在すること等が明かとなった。これらの事実はヘリウムが格子間を高速で拡散したことを示している。同時にヘリウムがアンダーサイズの溶質原子と強い結合力を持っていることが明かとなった。また、本研究の結果、トリチウムトリック法においては変位損傷がないために生成したヘリウムが空孔にトラップされないために、高速で粒界まで拡散することが他の方法による実験結果との違いの原因であることがわかった。
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