液相反応のミクロ構造へのアプローチ-構造を決定した溶媒和型クラスターの化学反応-

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03403002
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 梶本 興亜 京都大学, 理学部, 教授 (30029483)
• 研究分担者: 藤村 陽 京都大学, 理学部, 助手 (00222266) ; 吉村 洋介 京都大学, 理学部, 助手 (10192428) ; 原 公彦 京都大学, 理学部, 助手 (80025436)
• キーワード: 回転コヒーレンス法 / クラスター / 溶媒和 / 超音速ジェット / ファンデルクールス分子 / 電荷移動

研究概要

本研究では、溶媒分子の作る環境が化学反応に与える影響を、「溶媒分子の配置構造」への依存性というレベルにまで掘り下げて解明することを目標としている。このために、超音速ジェット中に生成した溶媒和型クラスターを用いて研究を行うが、その際クラスターの配置構造を決定することが必要である。構造決定には従来高分解能分光が用いられてきたが、クラスターのような大きな分子に対しては「ピコ秒回転コヒーレンス法」が有効であり、本研究ではこの方法によりクラスター構造を決定して反応との関係を明らかにする。
昨年度は、ピコ秒レーザーを立ち上げ、測定系、データ解析プログラムを作成した。本年度は、回転コヒーレンス法を実際の分子に適用してシステムのチェックを行うと共に、いくつかの新しいデータを得ることが出来た。具体的には以下のような内容の研究を実行した。
(1)ビアントラセン(BA)の0-0帯のいくつかの内部回転バンドについての回転コヒーレンスの観測を行って、回転定数を決定し、電子励起や内部回転の変化に伴う分子の構造変化を評価した。
(2)BA-ケトンクラスターにおける電荷移動状態の生成が、付着分子の対称性に影響されていることを示した。すなわち、メチルエチルケトンのような非対称ケトンでは、すべてのクラスターが電荷移動状態を与えるが、アセトン・ジエチルケトンのような対称ケトンでは、1:2対称クラスターが生成し、この場合は必ずしも電荷移動が起こらないことが判明した。このような対称の仮定が真実であるかどうかを構造決定によって検証するのが次の課題である。
(3)回転コヒーレンス法の精度を上げるために、パンプ-プローブ法を用いた測定を行う予定であるが、その準備としてピコ秒レーザーのアンプシステムを立ち上げた。

研究成果

• [文献書誌] K,HONMA and O.Kajimoto: "Symmetry demand in polar excited state formation of 9,9'-bianthryl in clusters with some ketones" J.Chem.,Phys.(1993)
• [文献書誌] Y.NAOTOH,Y.Fujimura K.Honma & O.Kajimoto: "Photodissociation oh the NO dimer at 193 nm:the rotational alignment of the NO(A) fragments" Chem.Phys.Lett.(1993)
• [文献書誌] H.ISHIKAWA & O.Kajimoto: "Photolysis of phenylsilane at 193 nm:Energy distribution od the fragments" J.Phys.Chem.(1993)
• [文献書誌] O.KAJMOTO: "TICT molecules in a free jet" ¨Dynamics and Mechanisms of Photoinduced Electron Transfer and Related Phenomena¨,(N.Mataga et al.Ed.),Elsevier. 145-154 (1992)
• [文献書誌] K.HONMA & O.Kajimito: "Microscopic solvation of 9,9¨-bianthryl soudied in its clusters with polar molecules" ¨Dynamics and Mechanisms of Photoinduced Electron Transfer and Related Phenomena¨,(N.Mataga et al.Ed.),Elsevier. 335-342 (1992)