研究概要 |
初年度から建設を進めてきたビーム-チャンバー法/ビーム交差法の装置が本年度に完成し,イオンビームの特性についての詳細なデータが得られるようになった。とくに,冷却型イオン源開発の成功は大きな成果であり,これによってイオン-分子反応中間状態と考えられるクラスターイオンの発生とその光解離および衝突解離実験に成功した。モノマーイオンでは、N_2^+イオンの場合,アーク放電で生成したイオンを高速で引き出し,磁場による質量選別を1.5kVで行った後,数eV(6eV以下)にまで減速したビームで,エネルギー幅1eV以下,強度は空間電荷限界の10^5cm^<-3>が得られた。衝突実験はモノマーイオン,クラスターイオンの両者について行った。CO^+ビームをArの入った反応室に入射させると約30%のイオンが電荷移行を行うことが見い出され,イオン源においてすでに相当量の電子的励起状態ができていることがわかった。しかし,それと同時に,衝突状態にレーザー光を照射して電子的励起状態をつくり電荷移行を起させる場合の反応生成物の捕集効率や検出効率が十分であることも分った。クラスターイオンでは,(N_2)^+_2,(N_2)^+_3,(CO_2)^+_2,(N_2O)^+_2等が衝突実験や光解離実験に十分な濃度で得られ,銅蒸気レーザーを用いた光解離実験が行われた。それと同時に,新規なイオンN_3O^+_4がある条件下で高濃度に得られた。銅蒸気レーザーの照射によってもArとの衝突によってもNO^+が強く現れることから,このイオンの構造はダイマーイオン(NO)^+_2にNO_2分子が付着したものであると推定された。もう一つの研究手法であるフローイング・アフタ-グローによる実験も昨年までの成果に加え、遷移金属原子の反応について新しい成果が得られた。Ti(a^3F,a^5F)およびV(a^4F,a^6D)と炭化水素との反応が詳細に調べられ,これら中性原子の反応においても衝突状態における電子移動が重要であることが見い出された。
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