本研究の遂行には、(1)励起原子ビ-ム源の強力化、(2)クラスタ-ビ-ム発生法の確立、(3)クラスタ-ビ-ム成分の同定、・制御法の確立、および(4)電子分光器の高感度化が必要とされる。そのうち、初年度である本年度は主として以下の点に中心をおいて研究を進めた。1.(励起原子ビ-ム源の強力化)ノズル放電型励起原子ビ-ム源の強度は、放電パワ-の上昇とともに増加する。しかし、パワ-の増加とともに発熱量も増加するため、一定の限界を越すとノズルの先端部分が破損する。これを防止するには、先端の耐熱性を増強するか、もしくは適切な放熱措置が必要である。本年度は、水冷式冷却装置を試作してパワ-の増強試験を行った。、従来型よりも数倍以上消費電力を上げても破損しないことが確認されたが、励起原子ビ-ム強度は従来型とほぼ同程度に留まった。この原因については検討中であるが、水冷ジャケット等の導入による放電領域近傍の電界の変化、放電用気体の冷却による効果などが考えられるため、これらの状況を変える対策を進める。次に放電用気体としてヘリウム以外の希ガスを用いることの効用を検討した。ネオンを用いると励起原子ビ-ム強度はヘリウムの場合のおよそ3分の1に減少するが、クエンチランプを必要としないためビ-ム源と衝突室の距離を2分の1以下にでき、この点は考慮すれば50%程度の実質強度増が見込まれることが分かった。 2.(クラスタ-ビ-ム発生法の確立)クラスタ-ビ-ムの作成法として、(1)パルスノズル式、(2)レ-ザ-脱離式、(3)レ-ザ蒸発式等の方式が考えられる。そのうち各種の分子および分子クラスタ-を非破壊的に気相に送り込む方式として、(2)が有望であるため、真空槽の改造を行い、YAGレ-ザ-照射による試料ビ-ム発生条件の検討を進めている。
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