光誘起電子移動反応による鎖状ポリエン及び損環化合物の電子移動反応の研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03403005
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 宮仕 勉 東北大学, 理学部, 教授 (20004442)
• 研究分担者: 鈴木 孝紀 東北大学, 理学部, 助手 (70202132) ; 池田 浩 東北大学, 理学部, 助手 (30211717) ; 高橋 康丈 東北大学, 理学部, 助手 (70197185)
• キーワード: コープ転位反応 / ジメチレンフラン誘導体 / ジメチレンピロール誘導体 / 光誘起電子移動反応 / 固相光化学反応

研究概要

本研究の期間中光誘起電子移動反応によるラジカルカチオンコープ転位反応の機構を研究してきたが最終年度は今までの結果に光音響測熱法によるイオン対のエネルギーレベルの実測や関連するアゾ化合物の直接光分解、光電子移動分解反応の結果を組み合わせラジカルカチオンコープ転位反応がカチオンラジカル環化-ビラジカル開裂の二段階反応機構で進行する事を明かにし、今までに得られた実験結果が矛盾無く説明し得る事が明かとなった。この反応に関連する1、4-ジアリール-2、3-ジメチルビシクロ[2.2.0]ヘキサンの光増感電子移動反応も詳細に研究した。この結果1、5-ヘキサジエン系への開環に段階的開環と協奏的開環が競争する興味ある増感剤及び溶媒極性効果のある事実が判明した。コープ転位反応と並行して研究してきた2、6-ジアリール-1、6-ヘプタジエン、2、7-ジアリール-1、7-オクタジエン、2、8-ジアリール-1、8-ノナジエン誘導体の電子移動反応によるビシクロ体への環化反応では著しいメチレン鎖の効果が見出された。ヘプタジエン系では効率良く環化が進行したが、他の系では水素移動が競争しその効率が急激に減少した。同様に本研究期間中研究し続けてきたジメチレンフラン、ジメチレンピロール誘導体の光電子移動反応による生成に関する研究は本研究補助金で購入したレーザーフラッシュ装置が効率的に働き不安定中間体のスペクトル的捕捉と化学的捕捉の速度論的研究が詳細に研究された。理論的計算結果をも含めこれらの非ケキュレ分子の基底状態一重項状態が明らかとなった。ジメチレンピロール誘導体に関しては電子吸引基の導入により基底状態が三重項状態に変化するという理論的予測がある。実験的証明が現在進行中である。ビスチアジアゾロテトラシアノキノジメタンと3種のジビニルベンゼンとの結晶性電荷移動錯体の固相光化学反応も精力的に研究されている。数少ない単結晶-単結晶変換による絶対不斉合成の可能性が判明しその詳細な機構解明が現在進行中である。

研究成果

• [文献書誌] Y.Takahashi: "Electron-Transfer Photochemistry of Endoperoxides" J.Chem.Soc.,Perkin Trans.2. 243-253 (1993)
• [文献書誌] K.Kikuchi: "Quenching Mechanism in a Highly Exothermic Region of the Rehm-Weller Relationship for Electron-transfer Fluorescence Quenching" J.Phys.Chem.97. 5070-5073 (1993)
• [文献書誌] K.Kikuchi: "New Aspects on Fluorescence Quenching by Molecular Oxygen" J.Am.Chem.Soc.115. 5180-5184 (1993)
• [文献書誌] H.Ikeda: "Subsutitution Effects on Regioselective Cyclizations of 1,5- and 2,4-Diphenyl-1,5-hexadiene Cation Radicals" Tetrahedron Lett.34. 2323-2326 (1993)
• [文献書誌] H.Ikeda: "The Cation Radical Cope Rearrangement of 2,5-Diphenyl-1,5-hexadienes under Electron Ionization" J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,. 367-369 (1993)
• [文献書誌] Y.Takahashi: "Cycloreversion of Arene Endoperoxides induced by Electron Transfer" J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,. (in press).