研究概要 |
本研究は,堆積物中に残る古生物起源の各種有機物(これを地球有機物と総称する)に記録された地球科学的情報を読み取り,その堆積岸的並びに地球科学的意義の考察を行うことを目的とした。この目的達成のために,(1)先ず,堆積相の判定できる堆積作中に固定されて,肉眼的に堆積状況の判断可能な固体有機物を対象にした顕微光学的手法による解析から始め,(2)さらに微細になり,肉眼では判定不可能な,分散型有機物までを対象にして,化学的方法をも併用した分析結果から読みとり,(3)それら資料に基づく地質学的考察を行う方針を立てた。 平成3年度は初年度で,当初計画通り,先ず,顕微鏡光学的設備の充実と,対象試料の採取とから始めた。顕微鏡光学装置の一部として,フ-リエ変換赤外吸収分光顕微鏡は予定通り入荷し,調整も済んだ。これによる研究成果として,特定単位成分(石炭のマセラル)についての赤外吸収特性の幾つかを把握できた。その成果は,地質学会西日本支部第123回例会に発表した(西日本支部会報No98,3〜4)。その検出精度を高めるように,手法の改良を検討するとともに,一般的固体地球有機物に対しても分析を継続中である。マセラルの光学性的物理特性の解析には万能顕微鏡を計画して準備したが,予算の分割のため完全装置として入荷できず,年度内の成果は,微細観察による固定地球有機物の形態的特性の判定にとどまった。しかし,その判定結果と顕微赤外分光分析との応対応は行えたので,野外の堆積相解析と相待って,相応の目的は達成できた。 野外における調査・観察と試料の収集は継続中である。特に,西日本内外帯の新・中生界の同時で異なる構造体間の対照が可能な試料,中・古生界の高有機質暗色石灰岩・同珪質岩,および,地質時代の大区分境界層準にしばしば出現する黒色泥岩,などを主対象にして,周辺の地質状況も考慮し,次年度に向け実施中である。
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