研究概要 |
本年度は以下の3種類の繰り返し単位からなる剛直高分子の結晶形態,高次構造を明らかにするとともにこれらの共重合体,3次元架橋体を合成し,結晶性,結晶欠陥,力学物性などを検討した。 (1)濃硫酸を結晶化溶媒として希薄溶液からいわゆる高分子単結晶を作製した。電顕観察により各々の単結晶形態の結晶化温度,溶媒濃度依存性さらに結晶成長機構を明らかにした。分子量(分子の長さ)により単結晶の形態に変化が見られるが,20〜30量体で得られる単結晶は分子鎖が板状晶面に垂直に配向しており,電子線回析,結晶格子像の観察より結晶a軸とb軸に角度rが直接決定された。これは剛直高分子ではaxial shiftのため今まで不確実のまま残されていた情報である。 (2)P(BPBZT)を等温結晶化すると,結晶晶辟があらわれた結晶形態を示す。しかし,X線回析,電子線回析によれば非晶に近い性質を示した。このことは剛直高分子結晶学における「結晶性〜晶辟」の関係を再検討する必要を示唆している。 (3)通常の屈曲性高分子の共重合体では,一方の共重合成分が10%を越えると結晶性を失う。ところが剛直性共重合体,例えばP(PBZT-co-PBZO)では全組成比にたいして結晶性を示す。特に分子鎖間距離の規則性はホモポリマーの場合と大差なかった。分子鎖構成部分のまたコポリマーの結晶化においては,最初に起った結晶核生成がその後成長する結晶形態を大きく支配する。 (4)P(PBZT),P(PBZO)の合成において,テレフタル酸の代りにトリメチン酸を少量加え,剛直高分子の3次元架橋体を合成し,その力学分散,応力〜歪曲線の測定を行った。
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