研究概要 |
海洋生物にはしばしば陸上生物には見られない親規の骨格,構造を有し,しかも興味ある生物活性を示す化合物が目出されることから,近年は含有成分の研究が盛んになり,医薬資源の宝庫としても期待されている。我々はこのような海洋生物由来の生理活性物質の全合成を目標として,ここ数年来研究を展開しているが,その一環として今回海綿の産生すりカリクリン類ならびにテオネラマイドFの全合成を企画した。 1.カリクリン類の全合成 カリクリン類は相模湾で採取されたチョコガタ海綿Discodermia calyxより単離された,特異な構造を有する一群の化合物である。カリクリン類(A-H)は強力な組胞毒性を有すると同時に,ホスファターゼ阻害活性を有し,発がんプロモーター活性を有する。我々はカリクリン類の合成にあたって,全体を4つのフラグメントにわけて,それぞれのフラグメントを合成後全体を構築することとした。この合成途上,分解物を立体選択的に合成することにより,カリクリン類の絶対配置を確定することができた。この結果より従来対掌体を主として合成して来たので,新たにフラグメントの効率的構築を検討し,スピロケタール部分を除く他の部分の新規合成法を確立することができた。 2.テオネラマイドFの全合成 テオネラマイドFは,八丈島付近の海洋に生息するTheonera種の海綿より単離された,双環状ドデカペプチドであり,殺菌性ならびに細胞毒性を有する。我々はすでに,このものを構成している異常アミノ酸の効率的構築に成功しているが,今回はそれらを順次結合してテオネラマイドFのかなりの部分を合成することができた。
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