タバコネクロシスウイルス(TNV)は、正二十面体対称(T=3)植物のRNAウイルスの代表例で、一本鎖RNAと、それを取り囲む180個のサブユニットタンパクによって構成されている総粒子量700万のウイルスである。TNVは自己のRNAとの相互認識作用の特異性が高いという特徴を持っており、サブユニットタンパクとRNAの相互認識機構を解明する上で格好の試料になっている。 TNVは8Å分解能においてサザンビ-ンモザイクウイルス(SBMV)のサブユニットタンパクの配置と類似していることが明らかにされたので、SBMVの原子座標から計算したFcとTNVのFoとでR値検索を行い分子の最適位置を求め、この位相を初期位相として分子置換法を用いて電子密度の平均化を行い位相の拡張を行った。現在5.02Åまで精密化を進め、総サイクル数91でR値16.1%、相関係数91.9%という値を得ることができた。 5.02Åで得られた電子密度を用いて非対称単位中の3分子についてポリグリシン鎖の初期構造を得ることができた。その結果、SBMVと比較すると部分的な欠損が1分子につき3ケ所確認されたほかには大きく変化している箇所は存在しなかった。TNVの一次構造は、現在解析中であるが総残基数は278であることが分かっており、これはSBMVと比べると18残基分多くなっている。従って、今回得られた構造からTNVのN末端方向へ伸びる電子密度の現れない部分の長さについてSBMVのものと比較すると33残基分長くなっている。イネ萎縮病ウイルス(RDV)は、20Å分解能の解説デ-タを撮影でき、現在回折強度処理を行っているところである。
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