研究概要 |
タバコネクロシスウイルス(TNV)の5A分解能分解能の構造決定を終えた。得られた電子密度図に基づいて分子模型を組み立てることが出来た。その結果、TNVとサザンビーンモザイクウイルス(SBMV)を比較するとサブユニットのアミノ酸残基数は275と260でTNVが15残基長い。粒子内部でRNAと相互作用する乱れた構造の部分はTNVが27残基も長く、ウイルス殻を構成する部分は12残基短いことが明らかになった。またRNAと相互作用する傾向の強いHis,Arg,Gln,Lysはこの領域に存在する頻度が極めて高い。これらのアミノ酸とRNAの相互作用など、乱れた構造をとっているポリペプチド部分とRNAとの特異的な相互作用や殻タンパク質のRNAに接触できる部分のRNAとの特異的な相互作用がタンパク・RNA相互認識を可能にしているのであろう。 イネ萎縮病ウイルス(RDV)は代表的な二重殻ウイルスであり、外殻は540個のタンパク質サブユニットからなり、T=3の対称をとっている。一方、内殻は120個のタンパク質サブユニットからなり、二量体単位で60組でT=1の対称をとっていると考えられる。総分子量は6,500万で結晶化された最大の粒子である。空間群はI23で格子定数は789Aである。 10A分解能の回折強度データの収集を行った。20A分解能で回転関数を計算したところ、通常の正二十面体対称では考えることの出来ないピークが現れた。このことを検証するために、外殻と内殻の正二十面体対称が一致する場合とそれらが互いに90°ずれる場合について、それぞれモデルを作成して回転関数を計算し、観測値の回転関数と比較した。その結果、RDVは外殻と内殻の正二十面体対称が90°ずれていることが明らかになった。
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