研究概要 |
タバコネクロシスウイルス(TNV)はT=3の正二十面体対称を持ち、180個のタンパク質サブユニットと1本のRNAで構成されている。X線回折強度データは高エネルギー研究所放射光実験施設の巨大分子用ワイセンベルグカメラを用いて収集した。結晶は立方晶系、空間群はP4_232、格子定数はa=338Åである。単位格子中に2個のウイルス粒子が含まれており、非対称単位中には15分子のサブユニットが含まれている。8Å分解能で分子置換法によって初期位相を決定し、非結晶学的対称による平均(NCSA)法によって精密化及び位相の拡張を行い5Å分解能の解析を完結した。R値は0.1 7,相関係数は0.92になった。5Å分解能の電子密度図に基づいて正二十面体対称の非対称単位にある3サブユニットの分子モデルを作成することが出来た。TNVと同じくT=3ウイルスであるSouther Bean Mosaic Virus(SBMV)との比較をすると、殻タンパク質の3個所でアミノ酸残基の欠損が有ることがわかった。またウイルス殻タンパク質のRNAと相互作用する領域には特異的に核酸と相互作用するとされているアミノ酸が集まっている。この特異的なタンパク質と核酸の相互作用がTNVの形態形成において重要な役割を果たしているものと思われる。これらの結果はActa Cryst.の論文として報告した。 RDV分子量は約6500万であり、結晶化に成功した最大の粒子である。結晶は立方晶系、空間群はI23,格子定数はa=789Åである。TNVと同様に放射光を用いて回折実験を行った。回折強度データ処理にも成功して、20Å分解能で二重殻構造を決定した。
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