ショウジョウバエにおける多重遺伝子の分子集団遺伝学的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03404001
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 山崎 常行 九州大学, 理学部, 教授 (10108649)
• 研究分担者: 高野 敏行 九州大学, 理学部, 助手 (90202150) ; 原田 光 九州大学, 理学部, 助手 (40150396)
• キーワード: 多重遺伝子 / ショウジョウバエ / 分子集団遺伝学 / トランスポゾン / 突然変異 / アミラ-ゼ遺伝子 / ヒ-トショック遺伝子 / 適応進化

研究概要

(1)ショウジョウバエの多重遺伝子族に含まれるアミラ-ゼ遺伝子及びヒ-トショック遺伝子の分子多型、調節機構、及び自然淘汰の分子的基礎の解明のための研究:キイロショウジョウバエ種内に多型的に存在するAmy1ー1,Amy1ー3,Amy1ー6,Amy3ー6,Amy1ー4,Amy5ー6の各アロザイム及びキイロショウジョウバエの近縁6種についてそのコ-ディング領域の塩基配列の決定を行った。その結果、共調進化はコ-ディング領域にのみ観察され、5'flanking領域は重複遺伝子間で独立に進化していることが明かとなった。ヒ-トショック遺伝子に関しては、その構造遺伝子のすべてが存在する第三染色体よりも第二染色体上にヒ-トショック遺伝子のmRNAの発現量に関して多量の変異が存在することが明かにした。(2)キイロショウジョウバエのトランスポゾン、P及びI因子の分子多型と転移機構に関する研究:自然集団より採集し単一雌系統として確立した系統のI因子の活性について解析し、そのすべての系統がI/R systemにおけるI系統であることを明かにした。またキイロショウジョウバエのI因子は2度の起源をもち、すべての系統に観察される動原体付近に分布するI因子の起源はキイロショウジョウバエ・オナジショウジョウバエの種分岐よりも古いこと、各染色体椀に観察されるI因子は比較的新しい起源をもつことを示唆するデ-タを得た。(3)自然集団由来の突然変異体及び新生突然変異蓄積系統で見つかったNull突然変異体の分子的解析:自然集団中に保有されるbw遺伝子座の可視突然変異の分子構造を解析し、調査した領域にトランスポゾン等のDNA断片の挿入は見られないことを明かにした。一方、実験室において約100世代突然変異を蓄積した系統においてGpdh遺伝子座に有意に高いNull突然変異率が観察されているが、これらの多くはP因子の転写開始点近傍への挿入によることを明にした。

研究成果

• [文献書誌] Harada,K.: "Comparative study of P element activity in two natural populations of Drosophila melanogaster." Japanese Journal of Genetics. 66. 725-737 (1991)
• [文献書誌] Harada,K.: "Spontaneous mutasion rates in null and bandーmorph mutations of enzyme loci in Drosophila melanogaster." Proc.Natl.Acad.Sci.USA.
• [文献書誌] Takano,T.S.: "The genetic structure of natural populations of Drosophila melanogaster.XXII.Comparative study of DNA polymorphisms in northern natural populations." Genetics. 129. 753-761 (1991)
• [文献書誌] Takano,T,S.: "DNA polymorphiosm and the origin of protein polymorphism at the Gpdh locus of Drosophila melanogaster." Population PaleoーGenetics:Proceeding of the Secenteenth Taniguchi International Symposium on Biophysics,ed.N.Takahata.Japan Scientific Societies Press.(1992)
• [文献書誌] Nitasaka,E.: "A novel eye morphology induced by P element in somatic tissue of Drosophila melanogaster." Mol.Gen.Genet.227. 181-186 (1991)
• [文献書誌] Nitasaka,E.: "Relationship between DNA structural variations and activities of P elements in typical P and Q strains of Drosophila melanogaster." Genet.Res.(1991)
• [文献書誌] Nitasaka,E.: "Genetic variations and regulation of P elements in Drosophila melanogaster." M.Kimura and N.Takahata,Japan Sci.Soc.Press,Tokyo/Springerヒeriag,Berlin., (1991)