研究概要 |
プラスチドの遺伝情報発現系を構成する因子の多くは核ゲノムにコードされている。我々は、転写後過程に関与するRNA結合タンパク質とその遺伝子を単離し、その構造と機能を解析した。 1.タバコの緑葉より、葉緑体RNA結合タンパク質とそのcDNA5種(cp28,cp29A,cp29B,cp31,cp33)を単離した。いずれも、トランジトペプチド、酸性アミノ酸に富むドメインと、それに続く2個のRNA結合ドメイン(約80アミノ酸)よりなる。葉緑体への輸送実験により5種とも葉緑体へ移行するタンパク質である。in vitroでの核酸結合能は、いずれもポリ(G)とポリ(U)と強く、RNA結合ドメイン1個でも結合能を有している。また、2個のRNA結合ドメインが強く核酸に結合するためにはドメイン間のスペーサーの存在が必須である。10種のRNA結合ドメインの配列をもとにその系統樹を作製したところ、3グループに分かれることが示された。 2.上記の5種のRNA結合タンパク質の遺伝子を単離した。いずれも4個のエキソンと3個のイントロンよりなり、イントロンの位置は同じである。cp33遺伝子のみは転写量も少なくTATA-lessプロモーターであった。 3.5種のRNA結合タンパク質を大腸菌で合成すると共に各々の抗体を作製した。5種の合成タンパク質は、いずれも成熟tRNAを除くすべてのプラスチドRNAと結合性を持っていたので、配列特異性はないものと考えられる。単離葉緑体より抽出液を調製し、抗体を用いてRNA結合タンパク質を除去して、プラスチドRNAのプロセシングや翻訳を調べると、いずれも活性が上昇する、従って、プラスチドDNAより転写されたRNAがまずRNA結合タンパクと結合し、mRNAの保存やリボゾームへの受渡しに関与することが考えられ、RNA結合タンパクがプラスチド内でのRNA分子のパーティショニングの役割を果たしている可能性が高い。
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