研究概要 |
1.既往の研究デ-タの収集・整理及びデ-タベ-スの構築 気象,窒素及び水分条件と水稲の発育,光合成・物質生産,養分吸収,器官形成・発達,及び登熱過程との関係について既往の情報の収集・整理を行うとともにデ-タベ-ス化を進めた。このうち,水稲の発育と環境についてのデ-タを用いて,日々の気温及び日長の経過から水稲の幼穂形成,頴花分化,出穂及び成熟にいたる過程を動的に予測するモデルの予測精度の検証を行い,このモデルが日本各地に栽培された水稲の発育の予測に有効であることを明らかにした。このモデルを兵庫県のメツシュ気候情報システムと結合させ、同県内の酒米水稲の日々の発育の進度を,1X1Kmのメツシュ毎に予測するシステムを開発し,その有効性を示した。さらにこのモデルを拡張することによって,日々の気象の経過から,葉数の増加過程及び主稈の最終葉数を予測するモデルを導いた。これによって本研究の最終目標である,生育・生産過程の動的予測をモデルのうち,発育サブモデルの主要部分の開発をみた。 2.圃場及び室内実験によるデ-タの収集と解析 気象や土壌環境の大きく異る,京大農学部附属農場,信州大学農学部附属農場,長野県伊那市の農家の水田,及びオ-ストラリア国ニュ-サウスウエルズ州立農業試験場の各圃場に水稲を栽培し,環境デ-タの連続計測とともに,地力窒素の無機化と水稲の唆収過程,体内窒素及び貯留同化産物のレベルと器官形成及び登熟過程についてのデ-タを収集した。得られたデ-タは現在解析中であるが,これまでの解析から,水稲の生産性を支配する単位土地面積当りの頴花数が,幼穂形成期の窒素保有量と,その時期から頴花分化後期までの間に吸収される窒素量に支配されることを明らかにした。これによって頴花数の成立過程を動的に予測するモデルの骨格が示唆された。
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