研究概要 |
ウイルスの持続感染では、免疫の存在にも係わらず、ウイルスは体内に潜伏し、宿主の免疫から巧みに逃れる。しかし疫学的、免疫学的、生物学的誘因により、時にはウイルスが再活性化され、その産生が起こり症状が発現する。以下得られた結果を述べる。 1.FIV実験感染ネコのリンパ節においてウイルス抗原は瀘胞中心部に存在する瀘胞樹状突起細胞あるいは傍瀘胞領域に存在するリンパ球に局在し、さらにウイルス抗原陽性リンパ球はCD4陽性Tリンパ球であった。2.ネコカリキルイルスはネコTリンパ細胞にIn vitroにおいて持続感染することが明かになった。3.ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)はネコ免疫不全ウイルス(FIV)のLTRを活性化した。それに関与するLTR内の標的部位はATF結合部位とTATAエレメントである可能性が示唆された。4.FIV LTRの活性化にはFHV-1の前初期(IE)遺伝子産物の関与が考えられるので、PHV-1のIE遺伝子をHSV-1のICP4ホモローグとして同定し、その塩基配列を決定した。その結果、他のαヘルペスウイルスのICP4ホモローグとアミノ酸レベルで35〜50%の相同性がみられた。5.FHV-1 ICP4を含めたαヘルペスウイルス(HSV-1),オーエスキー病ウイルス(PRV),ウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)のICP4ホモローグのFIVとヒト免疫不全ウイルス(HIV)のLTRに対する影響を調べるために,ネコ腎由来CRFK細胞とネコ胎児由来fcwf-4細胞を用いてCATアッセイを行った。その結果、FHV-1のICP4ホモローグは、FIVのLTRには、有意な影響を及ぼさないが、HSV-1,PRV,EHV-1のICP4ホモローグはFIV LTRを抑制した。さらにFHV-1のICP4ホモローグはCRFK細胞ではHIVのLTRを活性化したが,fcwf-4細胞では活性化しなかった。他のICP4ホモローグは両細胞においてHIVのLTRにはほとんど影響を及ぼさなかった。またすべてのICP4ホモローグはヒト結腸癌由来のSW480細胞ではFIVとHIVのLTRを活性化した。
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