研究概要 |
ヒトX染色体q28に遺伝子座の存生が知られている神経疾患(Adreno-leukodystrophy(ALD),Emery-Dreifuss muscular dystrophyなど)の原因遺伝子をポジショナルクローニングの手法を用いて同定することを目的として、ヒト染色体Xq24-qterのみをヒト染色体として有する雑種細胞X3000-11.1よりコスミドゲノムライブラリーを作成し1,784個のコスミドクローンを単離した。このうちNotI制限酵素認識部位を含むコスミドクローン400個をリンキングクローンとして同定し,これらを雑種細胞のパネルを用いてマッピングし,目的のXq28領域に19個の独立したclusterを同定した。さらにcross-species homologyを利用して,従来ウイルムス腫瘍由来細胞株での発現低下が知られていたQM遺伝子の遺伝子座がXq28であることを明らかにし,そのゲノム構造を詳細に解析した。ALD24例におけるサザン解析ではQM遺伝子の大きな欠失,組換えは認められなかった。また染色体の特定の部位(Xq28)から機能遺伝子を効率よく単離するために以下の方法を用いて解析を行った。まず雑種細胞X3000-11.1よりスプライシングを受ける前のheterogeneousnuclear RNA-complementary cDNA(hn cDNA)に含まれるヒト特異的な反復配列を利用して,Xq24-qter由来の新たなcDNAを11個単離した。この手法はすベての組織で発現しているhouse-keeping geneにのみ有効と考えられていたが,実際に単離されたhn cDNAクローンについてNorthern解析を行った所,脳でのみ発現しているような組織特異的遺伝子も含まれており,本法は大変有用であることが示された。さらにクローン化されたコスミドゲノムDNAとヒト脳cDNAライブラリーとのハイブリダイゼーションを行うことで,組織特異的かつ染色体特異的なcDNA単離を試みた。結果としてXq28遺伝子座を有し,主に脳と筋肉に発現している新たなcDNAクローンが1個単離同定された。このcDNAは比輔的組織特異的な発現様式を呈しており,このストラテジーが組織特異的な機能遺伝子の同定に有効であることが明らかとなった。
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