研究概要 |
I群抗不整脈の細分類は方法・標本・報告者などにより異なる結果が提出されてきた。その原因として、薬物の作用とNa^+チャネルの間接的指標である活動電位最大立ち上がり速度を用いるためと考え、単離心筋にpatch clamp法を適用してNa^+電流ないしNa^+チャネル電流を電圧固定下に直接測定して、そのブロックの様式を明らかにするとともに、得られた成績に基づいた細分類法を見出すことを目的として検討した。方法はモルモット心臓をコラゲナーゼ処理により単離した心室筋細胞にpatch clamp法を適用して、全細胞記録によるNa^+電流、細胞接着型及びインサイド・アウト型パッチにて単一チャネル電流を記録した。Ia群のジソピラマイドはNa^+電流の使用依存性ブロックの発現は、これまでの報告とは異なり遅・速2つの時間経過で発現することが判明した。そのうち、遅いブロック成分はイオン化型薬物がNa^+チャネルの活性化状態に親和性をもって結合、一方の速いブロック成分はイオン化型薬物が不活性化チャネルに親和性を持つことにより生じることを細胞外pHの変化などから明らかにした。Ib群のリドカインは大部分が速いブロック発現速度を示し、不活性化チャネルに非イオン化型薬物が結合すること、ごく一部にイオン化型薬物が活性化チャネルに結合することが明かとなった。同様にメキシレチンも大部分が速いブロック成分で不活性化チャネル親和性で、これは約1%の非イオン化型がブロックをもたらし、イオン化型は遅いブロック成分を生じていた。Ic群のフロケナイド,ピルジカイナイド,ピサラミルはいづれも遅いブロック発現のみを示し,活性化チャネルに親和性を示した。また、イオン化型薬物の活性化チャネルへの到達は細胞内側からではなく、外側から到達することを初めて明らかにした。このように薬物のイオン化型・非イオン化型がブロック発現に極めて重要な役割りをはたしていることを心筋で初めて明らかにした。これらの情報はその分類や使用・薬物の開発に有用な情報をもたらすと考えられた。
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