我々は既に、正常者では末梢血におけるメモリ-形質をもつT細胞の比率は年令とともに上昇し、思春期以降はほぼ成人のレベル、すなわち、CD4ヘルパ-T細胞の40%内外、CD8^+T細胞の25ー30%内外に達することを明らかにした。さらに、CD4^+CD45RA^+のナイ-ブ形質をもつ細胞の3%程度がILー2レセプタ-α鎖を発現することを見いだし、このような細胞はCD45抗原フアミリ-をコ-ドするメッセ-ジの発現状態、リンホカイン産生能、B細胞の免疫グロブリン産生に及ぼすヘルパ-能などからみてメモリ-T細胞への移行期にある可能性を見いだした。 また、EBウイルス初感染による伝染性単核症ではCD8^+T細胞を主とするが、CD4^+T細胞にもメモリ-形質の誘導がみられ、急性期にはそれぞれ80%、60%前後に達するが、数週間後には年令相当の比率にまで低下することを見いだした。このようなメモリ-T細胞の消失のメカニズムを検討し、活性化されメモリ-形質を獲得したT細胞はin vitroでは極めて死滅し易く、その形態変化、DNA fragmentationなどのパタ-ンは、従来より胸腺細胞などで報告されているアポプト-シスに極めて類似することが明らかになった。EBウイルスによる伝染性単核症の急性期には、末梢血にもメモリ-形質をもつT細胞が過剰に誘導され、疾患の終息にともないその多くがアポプト-シスで死滅し、一部が永続的な免疫記憶細胞として選択されるように思われるが、その詳細は今後に残されている。麻疹などではメモリ-形質をもつT細胞の増加はそれほど明らかでなく、T細胞の動態は疾患によりかなり差があるらしい。 このようなT細胞におけるメモリ-形質の獲得とアポプト-シスの傾向は、骨髄移植後の末梢血CD4^+T細胞にも観察される。この現象はアロオ-トを問わずみられ、また、移植後の感染やGVHDの存在とは必ずしも関係しないようであり、より本質的な活性化機構の存在を推測させる。
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