ヒトTリンパ球はCD45抗原ファミリーの発現を指標に、ナイーブT細胞、メモリーT細胞に大別されることが知られてきた。ヒト新生児T細胞の殆どはCD45RA^+ナイーブT細胞からなるが、生後、様々な抗原刺激によりCD45RA^+からCD45RO^+への形質変換、機能的成熟を遂げ、成長につれ特異的免疫能を獲得したメモリーT細胞プールが増大すると考えられる。伝染性単核症をモデルに、ウイルス感染時のT細胞の活性化と増殖、それに引き続く特異的なメモリーT細胞の成立の機構を解析した。 1)伝染性単核症T細胞を免疫原として、IMN3・1単クローン抗体を作成した。この抗体は、伝染性単核症などにみられる活性化細胞、AIDSのCD4^+T細胞、胸腺細胞など、アポトーシスに陥り易いT細胞に選択的に発現する新しいT細胞後期活性化抗原(分子量約120kDa)を認識する。 2)伝染性単核症急性期には、活性化を受け、CD45RO抗原を発現した異型リンパ球の著増する。このような活性化T細胞はFas/Apo-1抗原を発現し、アポトーシスに陥り易く、疾患の経過とともに急速に除かれる。 3)正常人のCD45RO^+メモリーT細胞にもFas抗原の発現がみられるが、伝染性単核症のCD45RO^+T細胞と異なり、アポトーシス抵抗性である。前者にはbcl-2蛋白の細胞内発現がみられるが、後者にはbcl-2蛋白の発現はみられない。同じくFas抗原を発現した細胞でも、bcl-2発現の強弱によりアポトーシス感受性に差がある。一般に、T細胞の活性化に伴いbcl-2蛋白の発現減弱、Fas抗原の発現増強がみられ、アポトーシス感受性は亢進するが、なんらかの機構でFas^+/bcl-2^+の形質を獲得した一部のT細胞が細胞死を免れ、T細胞メモリーが成立するものと考えられる。 4)Fas抗原は末梢リンパ球の一部、単球、好中球に発現がみられるが、Bcl-2発現はリンパ球、単球、好中球の順に減弱し、それぞれの細胞群のアポトーシス抵抗性と密接に関係するもののようである。
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