研究概要 |
1.正常ヒト肝細胞培養法の確立への検討 培養ヒト肝細胞を人工肝臓のバイオリアクターとして用いるには,限られた肝組織から効率よく肝細胞を分離培養しなくてはならない。このため肝切除症例の切除肝非病変部より,正常ヒト肝細胞の分散法と培養肝細胞機能を検討した。肝細胞の分散には、コラゲナーゼ単独よりもコラゲナーゼとディスパーゼの混合液による分散法が優れており,約15倍の収量を得た。温阻血時間が90分までは,単離肝細胞の収量およびviabilityには影響を認めなかった。培養法としてはWE,L-15培地にインスリン,グルカゴン,EGFを添加することにより培養可能であり,10日間にわたった肝細胞機能を維持出来た。以上より本分散法により分離・培養されたヒト肝細胞はハイブリッド型人工肝のバイオリアクターとして応用可能であることが示唆された。さらに培養法に検討を加え,培養ヒト肝細胞のモジュール化の検討を進めたい。 2.積層型人工肝モジュールのin vitro機能評価 培養ヒト肝細胞を利用した積層型人工肝臓を作成・応用するために従来の積層型人工肝モジュールの約5%に相当する細胞を充填出来る小型モジュールを用い、培養ブタ肝細胞を用いモジュールのin vitroでの機能評価を行った。灌流培養回路を作成しモジュールを組み込み,5日間にわたって糖合成,尿素合成能,DNA合成能を維持しており,また高いアンモニア代謝能を有しており,さらに形態学的にも肝細胞は安定した培養形態を示していた。以上より,培養ブタ肝細胞を組み込んだ小型モジュールは,人工肝モジュールとしての機能を認め,今後さらにex vivoでの評価を加えることによりヒト肝細胞を用いた積層型人工肝モジュール作成への基礎的資料としたい。
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