研究概要 |
生体肝移植は脳死肝移植と比べ、ドナ-肝のバイアビリティの良好なこと,組織適合性がよいことが予側され、それを科学的に証明するとともに、このことを踏まえて術後管理体系の確立の研究に入った。肝バイアビリティの評価は、肝ミトコンドリアのRe20×stateを評価することで行った。すなわち動脈血中ケトン体比を測定し評価し肝バイアビリティ-を分析した。これまで31例の生体肝移植を行った。ドナ-肝はすべて生着し一次的無機能肝はなく、このことは血中ケトン体比の上昇で証明できた。またこのレドックス理論に基づき術後管理を行ったところ、動脈血栓,肝静脈狭窄,門脈血栓,血腫による肝虚血を予知でき,外科的にあるいは 保存的に全て治療でき移植肝を救いえた。免疫抑制剤は新しく開発されたFK506を使用したが、その使用法にも血中ケトン体比による肝バイアビリティ-の評価が役立ち、安全性を高めえた。 ドナ-候補者とレシビエントとの間で血清学的HLA検査 リンパ球混合培積試験,HLAーDNAタイピングを行い、術後の免疫抑制剤の投与量とその効果を検討し分析中である。これまでの結果では1例に明らかに拒絶反応を証明できたが、この症例はABO型incompatilbeの組み合わせであった。他に3例のcompatible組み合わせで拒絶反応を思わせる反応があったが、免疫抑制剤の増量やステロイドパルス療法で治療できた。脳死肝移植の拒絶反応の発生頻度の報告より明らかに少なく、またHLAーDNAタイピングの良好な程拒絶反応が少ないことがわかった。術後管理上問題となった大きな点は、ウイルス感染であり、中でもEウイルスの感染が多かった。このことは今後組織適合性試験に基づき免疫抑制剤の使用を変えることで、さらに一層の成績向上が期待できる。
|