研究概要 |
親子間の生体肝移植では、HLA遺伝子の関係から組織適合性が良好であることが予測され、移植後の免疫抑制剤の投与量および方法,さらに長期的免疫寛容に影響すると考えられた。そこで、HLAの血清学的・DNA学的分析を行い免疫抑制剤と術後感染症の発生との相関を求めた。免疫抑制剤として新しく開発されたプログラフ(FK506)とステロイドを基本とした。投与量と投与方法を3段階で改善した。すなわち投与量を初期投与の2/3,1/3と減量し拒絶反応の発生頻度とウイルス感染症の発生頻度を明らかにした。その結果、ブログラフは血中全血トラフ値を10〜20ng/dlに調節するようモニタリングしながら投与量を決定することが安全であることが判明した。ステロイドの副作用を考慮し移植後の肝機能安定期に中止できるか検討したところ3〜6カ月(移植後)頃に減量・中止することが90%の症例で可能であることが判った。ウイルス感染症はサイトメガロウイルス感染,エブスタインバーウイルス感染症がおよそ15%あり、その早期診断、早期治療が成績向上のため重要であることが判った。 さらに重要な新知見として、免疫寛容が脳死肝移植よりさらに数多く導入できる可能性があり、すでに95症例の中で4症例が免疫抑制剤投与なして移植肝が生着できた。このことは免疫寛容が親子間では成立し易い可能性が示唆された。
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